25
行為はまだ続いていた。
秘部に中に入っている指はついに3本まで増やされており、指をバラバラと動かされると身を捩り、出し入れをされると嬌声があがった。
ヒュウガは当の昔に私が一番感じる場所を見つけたようで、そこを重点的に擦られる。
もう何度絶頂を迎えたのか忘れてしまった。
最初こそ数えていたのに、頭が真っ白になるたびにそれどころじゃなくなるのだ。
初めて絶頂を迎える時、襲いくる何かに恐怖を感じて『ヤ、ヤダっ、なんか…くる…』と怖がっていた私にヒュウガは優しく『大丈夫』と声をかけて目尻にキスを落としてくれた。
どれくらいの時間が経っているのだろうか。
もう夜が明けるんじゃないだろうか、と思うけれどカーテンの隙間からはまだ光は差してこない。
そう思った瞬間、また私は絶頂を迎えた。
「っ、ぁ…は…ッ、ぁ…」
「もういいかな?」
肩で息をしている私に問いかけるわけでもなく一人ごちたヒュウガは、やっと私の中から指を抜いた。
「は…っ、ヒュ、ガ…こんなに、するものなんですか?」
「ん??んー、あだ名たん初めてでしょ?少しは慣らしておいたほうがいいかなって。」
確かに初めてだ。
あーなんて言ったっけ。
確かあれだ、処女ってやつだ。
「挿れていい?」
聞いてくるヒュウガに「何を?」と首を傾げる。
本当にわからないのだ。
「これ。」
そういってヒュウガは下半身を指差した。
自然と導かれるように視線で追ってしまって、すぐに顔を背ける。
それくらいはさすがに知っている。
「き、聞かなくてもいいです。」
「だってあだ名たんが聞くから。」
ヒュウガはやっと自分も服を脱ぐとベッドサイドの引き出しから何かを取り出した。
私は今度は何をするつもりなのだろうかと、つい目線をやる。
四角い何かだ。
「それ、なんですか?」
「ゴムだよ、知らない?」
「ゴムって…纏めてとめるやつですか?」
何故今ここで必要なのだろうかとキョトンとした私に、負けず劣らずヒュウガもキョトンとした。
「コンドームって知らない??」
「知らないです。」
「聞いたことくらいは?」
「ないですけど??」
ハッキリと言えば、今度は苦笑された。
「エレーナってばホント昔から異常なくらい過保護だったんだねぇ。」
しみじみとしているヒュウガに私は何故急にそんな話に??と内心首を傾げながらも頷いておいた。
「これね、避妊道具だよ。」
「避妊って……妊娠しないため、ですか??」
「ん。」
「え?!?!この行為って妊娠するんですか?!?!赤ちゃんはこうのとりが運んで来てくれるんだってエレーナが!」
「………オレ、今日以上にエレーナのこと憎んだことはないかも。何この子、純粋すぎ!」
エレーナひどい!
嘘だったのね!!
「え、私、に、妊娠するんですか?」
「したいの?」
「い、いえ!まだ研究に没頭したいので!」
「そこまで否定されると無理矢理にでも妊娠させたくなるなぁ。」
な、なんか今背筋がぞくりと…。
「ま、いっか。まだ今のままで。それに、これは妊娠しないようにつけるんだから、大丈夫だよ。」
100%じゃないけど。というヒュウガの心の声は聞こえなかった。
「そうなんですね。」
ヒュウガが袋を破って取り出すのをマジマジと見る。
羞恥心が興味心に負けて、それをつけているのもジッと見ていると、ヒュウガはふと顔を上げた。
「あだ名たん、さすがのオレもそんなにジッと見られてたら恥ずかしいかな。」
「ご、ごめんなさいっ!!」
負けていた羞恥心が込み上げてきて、私は顔を逸らした。
「何も知らない小さな子供に見せて無理矢理しているような複雑な気分だよ…。」
「別に何も知らないわけでは…」
なんて、ほとんど知らないけれど。
ゴムとかいうやつもきっと『普通』なのだろうな。
私の心の声を知ってか、ヒュウガは私の前髪にキスを落とした。
「これからオレと知っていけばいいよ。むしろオレとしかダメ。」
そう言って笑うヒュウガに私も何故だか安堵した。
監禁されていた5年のブランクは意外と大きかったようだったから。
ヒュウガはホッとしている私の足を開いてそこに体を割りいれてきた。
急なことでまた体を硬くさせると、優しく頭を撫でられる。
「力、抜いた方がいいよ。」
ひたり、と何かが秘部に押し当てられた。
小さく息を飲んだ途端ズプッとヒュウガ自身が入ってきて、あまりの痛さにシーツをキツク握って声を荒げた。
「い、ゃ…ッ、痛いっ、痛い、」
「ッ、最初だけだから、ほら、力抜いて。」
ヒュウガも何だか苦しそうだ。
言われたとおりに力を抜こうと息をしようとするけれど、痛いものは痛い。
けれどヒュウガは私の唇や首筋にキスを落として痛みを紛らわしてくれる。
やわやわと胸を揉まれてそちらに気がいっていると腰を押し進められた。
全て入りきると、ヒュウガはもう一度唇にキスを落として律動を始める。
最初こそ痛かったけれど次第にそれは快楽を運んできた。
ヒュウガはシーツをキツく握り締めている私の手をそっと解くと、自分の背中へと回し、律動を速める。
この行為がこんなに愛おしさが溢れてくるものだなんて知らなかった。
知ってよかったとも思うけれど、何より恥ずかしい!!
ヒュウガの素肌から感じる温かい体温とか、繋がった部分の熱いくらいの熱とか、頭の天辺から足のつま先まで余すことなく伝わる快感。
ヒュウガも私のように感じてくれているのだろうか。
ギュッと固く瞑っていた瞳を開けると、ヒュウガと目線が交じり合った。
もう逸らすことは許されないとばかりに視線が絡み合う。
ヒュウガの荒い息遣いとか、額から顎へと伝い落ちる汗とか、どれもが色っぽい。
「っぁ、んっ、は…つ、伝わって、ますか?」
「ん?」
ユリアさんもヒュウガも言った。
繋がれば言葉では伝えられないことも伝えられるって。
感情のままに動いてみるのもいいって。
確かに伝わる、ヒュウガの気持ち。
肌を撫でる優しい手とか、大丈夫かと労わる声とか、それとは裏腹に熱い視線とか。
愛おしいって気持ちがどんどん膨らんでいく。
「ぁ、ッ、…私の、伝え切れないくらいの好きって気持ち、ッ、伝わってますか?」
ヒュウガは目を大きく開けてからすぐに小さく苦笑した。
「あだ名たん、それ反則…。」
でも、と続けるヒュウガ。
「伝わってるよ。あだ名たんの気持ち。」
よかった、と生理的な涙が零れると、ヒュウガは唇でそれを舐めとり、一層律動を速めた。
「や!ぁ、あっ、ん、ッ、っぁ、ヒュ、ガ…あ、あぁっ!」
思うままに揺さぶられて私が達すると、ヒュウガも一瞬眉を寄せて私の腹部に欲を放った。
荒い息を必死に整えていると、ヒュウガは腹部に放った欲をティッシュで拭い、隣に横になるなり私をその逞しい腕に抱き寄せる。
「オレのも伝わった?」
だいぶ息も落ち着いてきた頃、ヒュウガが私の髪を指で梳きながら聞いてきた。
時々耳を掠るその指がくすぐったくて、私は小さく身じろぐように首を傾げる。
「何をですか?」
「オレのあだ名たんに対する愛してるって気持ち。」
あぁ、彼は私の気持ちが伝わったと言ってくれたっけ。
情事中の言葉を思い出して胸の辺りが熱くなった。
緩む口元を隠すようにヒュウガの胸板におでこをくっつける。
「はい。」
頷くと、ヒュウガの唇が頭に触れて、それから耳に触れた。
「愛してる。」
囁かれると同時に思い切り抱きしめられた。
とくん、とくん、と微かに聞こえるヒュウガの心音。
ひどく優しい音だと思った。
「私も、愛してます。」
火照っている2人の体温はまだ熱いくらいだ。
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