渦巻く感情
「おかえりなさいませ、アヤナミ様。」
2週間ぶりにも関わらず、名前は相変わらずの無表情を貫き通していた。
そんな名前の頬に手を添えて短いキスを送ってやる。
「いい子にしていたか?」
「子供ではありませんので、それに対する答えを持ち合わせてはいませんが。」
「久しぶりに会ったのだから笑顔で迎えてくれてもいいだろう。」
「これでも心から喜んでいるのですけれど。」
「顔に出せ、顔に。」
額、瞼、頬、それから唇。
名前の下唇を自分の唇で挟んで舌を入れようとすると、名前の手がそれを拒んだ。
「子供の目の前で毒にしかならないようなことをしないでください。」
名前はクロユリの方へと目線を下ろす。
それにつられるようにして目線を下ろし、そればかりか執務室からの刺さるような視線に目をやると、ヒュウガがニマニマとこちらを見てきていた。
「名前、あそこに立っている馬鹿にコーヒーでも淹れてやれ。塩をたっぷり入れてな。」
「かしこまりました。」
名前が参謀長官室を出て行ったのを横目に見やり、椅子に座る。
数秒置いてクロユリに話しかける。
「暗殺者はどうだった。」
「大したヤツは来ませんでした。」
「そうか。名前はどうしていた。」
「一度だけ部屋を抜け出していました。」
「何処に行っていた?」
「名前は散歩に行っていたと。ですがハルセに後をつけさせたらメルモットの執務室に入っていったらしいです。」
「やはりな。」
『あだ名たんが裏切ってたりして♪』
ヒュウガのセリフがやけに脳裏にこびり付いている。
「…ご苦労だった、クロユリ。カツラギを呼んで来てくれ。」
クロユリを執務室に戻し、椅子の背もたれに深く体を預けてため息を吐く。
「お呼びでしょうか。」
「あぁ。」
深く息を吐き、そして新鮮な空気を吸う。
そしてカツラギを真っ直ぐに見据えた。
「名前について調べ上げろ。」
何でもいい。
ほんの僅かな情報でもいい。
名前が裏切っていないという、その情報と確信が欲しかった。
隣の部屋で、ヒュウガが塩入りコーヒーを飲んで悶えている姿と、叫び声が聞こえた。
「それでクロユリ様ってばとても可愛らしくてですね。洗濯物を干すのを手伝ってくれたり…、アヤナミ様??」
「…」
「お疲れですか?」
ベッドサイドに腰をかけていると、名前がふと顔を覗き込んできた。
「いや、少しボーっとしていただけだ。」
「2週間の遠征でしたから、きっとお疲れなんですよ。少し早いですけれどゆっくり休んで、―――ッ、ぁ!」
名前の腕を引っ張って白い鎖骨に歯を立てると、名前が身を硬くして痛がった。
名前の体勢は崩れ、私の足の間に入って床に座り込む。
「ぃ、ャ…アヤナミ様…、痛い、」
私の胸板に手を当てて距離を置こうとする名前の手を握ってやり、またも引っ張ると、さらに距離が縮まった。
今度はその赤くなった鎖骨を舐め上げ、きつく吸い上げて痕を残す。
それから首筋、そして耳たぶを舐めて軟骨を優しく噛んでやれば、名前はぎこちなく控えめに私の背中に手を回してきた。
「っ…、アヤナミ様…、おかえりなさい…ませ」
上から見下ろしてやると、名前は至極嬉しそうに頬を赤く染めて微笑んでいた。
見下ろされているのに気付いたのか、名前はハッとして顔を下に向けて隠した。
名前が何を思って情報を漏らしたのかはまだわからない。
でも今この瞬間、嬉しそうに抱きしめてきた名前が真実ではないだろうか。
これが名前の演技だったとしたら、それは見事なほどで、拍手さえ送るだろう。
きっとそれで殺されても悲しくなるだろうが、見事な演技だったと賛辞を送り、心が弾むはずだ。
きっと何かある。
名前が情報を漏らした理由があるはずなのだ。
そう考えると、やけに気持ちがすっきりした。
この私を欺けると思うな。
誰が主人か、躾ける必要があるようだ。
くつり、と喉の奥で笑って、名前の顎を掬い上げて唇を重ねた。
昼間のように名前は抵抗は見せない。
きっとあの時の無表情さも、すべて照れ隠しだったのだろう。
昔の自分だったら読めなかった名前の表情や行動も、今ならわかる。
「ッ、んん……」
舌を絡めて吸い上げてやると、名前から篭った声がもれた。
ただそれだけで熱く昂ぶる。
床に座り込んで膝立ちになっている名前の唇を貪る。
キスだけで力なくへたり込めばいい。
強くそう思って歯列をなぞったり舌を絡めると思惑通り、名前は私の膝に持たれかかった。
唇を離し、私の膝の上に置かれている名前の手を取って昂ぶり始めてきているそこに押し当てた。
「ッ、」
最初こそトロンとしていた瞳も、これには驚いたように目を見開いた。
「アヤナミ、さまっ、」
手を引こうとする名前の手を握らせるように押さえる。
「2週間欲を吐き出していないこれを中に入れるのと口に入れるの、どちらがお前にとって楽だと思う?」
もう片方の手で促すように名前の頭を撫でてやる。
「お前の為に言っているんだかな。2週間も触れられなくて溜まってるんだ。早く名前の中に入りたくてな。ろくな愛撫も無しに挿れても文句は受け付けないが?」
「……今日は何もせずに寝るという選択肢は…」
「ない。」
即答すると、名前は観念したように小さくため息を吐いて頷いた。
押さえつけている手をそっと離してやると、名前は数拍おいた後にゆるゆると手を動かした。
布越しとはいえ名前の手の温度と形をしっかりと感じ取れる。
しばらくはそんな名前を眺めていたが、一向に直に触ってこようとしないことに痺れを切らし始めた。
「名前、」
「…だ、って…」
名前を読んだだけで何を言いたいのかがわかったらしい。
『だって』という子供染みた言い訳の常套句を名前が使うのは珍しくもあり面白くもあったが、これでは何時間経っても名前の中に入れなさそうだ。
「やめるか?」
と優しく言ってやるが、止めさせるつもりなどとんとない。
「……やめます。」
「じゃぁ服を脱いでベッドに横になって足を開くんだな。」
絶句する名前の髪を指で梳いた。
「痛いのはイヤだろう?私もどうせなら気持ちよくさせてやりたい。」
「……今日のアヤナミ様、意地悪ですね。」
何を思っているのか知らないが、名前が情報を漏らしたせいで暗殺者が大勢戦地で迎えてくれたんだ。
これくらいしても罰は当たるまい。
名前は一度ギュッと瞳を閉じた後、ズボンのチャックをゆっくりと開け、それからまた瞳を閉じると、下着を下げてそれを取り出した。
「あつ……」
「名前相手だからな、興奮もする。」
そういってやると、名前は恥ずかしそうに唇を引き結んだ。
その様子に喉の奥で笑うと、名前は少し目を細めて睨みあげてきた。
「変態です。」
「名前にこんなことをさせられるのならそれでもいい。」
名前はさらに顔を赤くして、半ばヤケクソに熱く昂ぶっているそれを手で包んだ。
小さな口から覗く赤い舌が亀頭を舐める。
それから裏筋を舐め上げてきた。
必死に愛撫している名前を愛おしく思う。
そればかりか、視覚的にグッときた。
優しく髪を撫でてやりながら感覚的にも視覚的にも楽しむ。
手で根元から亀頭まで擦り上げる名前は無表情ながらも必死さが伝わってくる。
まずい。
このままではあまり持ちそうにない。
秀でて上手いわけではない。
ただ、視覚的にクるのだ。
日頃慇懃無礼な名前が今は自分に従い、こんなコトをしているという事実。
させているという背徳感はさらに興奮する。
ゾクゾクとしてつい口元が釣り上がるが平然を装う。
「名前、咥えろ。」
名前は滲み出てきた先走りの液を舌で舐め取ると、そのまま素直に口に咥えた。
きっと名前の思考回路も麻痺しているのだろう。
ぎこちなく舌と頭を動かして愛撫する名前。
「ん、んん…ッ、ん…」
くぐもって聞こえる苦しそうな甘い声には、どくん、と大きくなったのが自分でもわかった。
「ッ、名前…、でる…」
眉間に皺を寄せて名前の後頭部に手を回す。
押さえつけると名前が苦しくなるだけなので、気を抜けば力みそうになる手は必死に添えるだけだ。
ふいに、名前が根元から亀頭に向かってキツク吸い上げた。
「っ、」
射精を導かれるような愛撫に、素直に欲を名前の口の中に吐き出した。
一瞬苦しそうな顔をした名前だったが、数回に分けてそれを飲んでみせた。
「っは…、」
口からずるりとそれを抜き、名前の口元についていた白濁を人差し指の背で掬い、唇に寄せると、名前は素直にそれを舐め取った。
その仕草に、支配感が一気に体中を駆け巡った。
それは脳までも犯し、なけなしの理性は崩れ去る。
終わった、とばかりに疲れきっている名前の腕を引き、腰に腕を回してベッドに放る。
びっくりして身を引く名前の腰を掴んで引き寄せると、服を剥いだ。
両足を開いて秘部に指を這わせるとすでにそこは濡れていた。
「慣らさずとも濡れているな。」
「ッ、ぁ…アヤ、ナミ様…お疲れなんですから…もう寝ましょう。」
「あぁ、疲れているな。だがそれを癒すためにはお前が必要だ。」
お前は私の癒し、そのものなのだから。
「っ、ふ…ぁ、」
「舐めて感じたのか?」
意地悪く笑ってやると、名前は薄く涙を浮かべて睨んできた。
「誰がさせたと思ってるんですか。」
枕を投げつけられたが、そんなものは片手で受け止めて床に放った。
そんな行動や表情がこちらを煽っているなんてことを、名前はきっと知らないのだろう。
薄く微笑んでから内太ももに小さくキスを落とし、ぐしょぐしょに濡れているそこに突き刺した。
名前の背中が仰け反り、きつく締め付けてくる。
ゆっくりと動かすだけで中が絡み付いてくる。
名前は嬌声を上げながらシーツを握り締め、襲いくる快楽に悶えていた。
名前が一番感じる部分を刺激しながら揺さぶると、名前は呆気なく達し、中に埋まっている異物を尚も締め付けてくる。
それでも腰を動かして刺激を与えてやると、名前はビクビクと中や四肢を振るわせた。
何度も何度も絶頂を味あわせる。
そうして名前が何回目かの絶頂を迎えた時、ようやく中に欲を吐き出した。
「っ、は…は…、ッ、…」
必死に息を整えようとしている名前を、繋がったまま抱きしめてやる。
すると、名前も抱きしめ返してきた。
次第にどこかへ行っていた理性が戻ってくる。
唇にキスを落とし、頬、そして耳に唇を這わせて首筋を舐めた。
「今度は優しくしてやる。」
2週間ぶんを、今、たっぷり愛をこめてな。
そう言うと、名前はサッと青ざめて首を振った。
「も、もう無理です!」
「そう遠慮するな。」
「そういうんじゃな、ンッ」
うるさい口を唇で塞ぎ、舌を絡めた。
(指先一本動けなくなるまで愛してやる)
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