クリスマス休暇のはじまり



スリザリンではクリスマス休暇は寮に残る生徒はほとんど居ない。生徒のほとんどが貴族なためである。
ウィンターソンであるシェリルも例外ではなく、クリスマス休暇に入るその日、セオドールとドラコ、それにクラッブとゴイル達と駅へと向かった。

駅に着くと、シェリルの代わりに荷物を持っていたクラッブとドラコとセオドールの荷物を持っていたゴイルは慌てて貨物車のある方へ行き、残された3人は先にコンパートメントを取る為に特急に乗っていた。


「それにしても、誘っといてなんだがシェリルとセオドールがクリスマスパーティーに来てくれるなんて意外だったよ」

「そうですか?」

「あぁ。だってセオドールもだが、シェリルも人混みが嫌いだろう?それに騒がしいのも」

「否定はしませんが、お友達であるドラコに誘われたら行かない訳ないですよ」

「シェリルが行くなら行く」

「セオドールはともかく……シェリル、ありがとう」

「でもビックリしました。招待状はマルフォイ氏の直筆でしたし、しかも贈り物まで頂いてしまって……」

「シェリルはスリザリンでも有名だし、純血貴族なら当然だ。父上もシェリルが来てくれるならそれくらいはするだろうさ」


シェリルがジルであると知らないドラコからすれば、ルシウスがそこまでするのが不思議ではあるのだろうがシェリルは純血貴族のウィンターソンであるし、成績優良者だ。
寮監のスネイプ先生の覚えもいいし……とそう推測していた。

一方、シェリルがジルであると知っているセオドールやシェリル本人からすれば、ルシウスのその行動は「あぁ、ご機嫌伺いか……」と呆れるようなものだ。
ジルの性格上あまりそういったことは好きではないのだが、そこはまぁルシウスだからしょうがないか、と諦めが入っていた。

ルシウス・マルフォイという人間は権力を握る嫌味で傲慢と思わられがちだが、実際は臆病で実に小心者……もとい長いものには巻かれろ、な人間だった。


「マルフォイ氏からは何を貰ったんだ?」

「パリの王宮御用達の高級菓子に、深緑色の薔薇の髪飾りですよ」

「さすが父上だな。シェリルにはダークグリーンが一番似合う!」


深緑の令嬢と呼ばれているのを知っているのだろうチョイスである。
ちなみにお菓子はスネイプとのティータイムでお茶請けで食べた。

そんな話をしていると、ホグワーツ特急は駅に着いたのか停止にかかり徐々にスピードを落としていく。

クラッブとゴイルが荷物を取りに行き、それぞれが受け取る。


「じゃあ、シェリル、セオドール。クリスマスパーティーで会えるのを楽しみにしてる」

「えぇ、また」

「じゃあな」


短い挨拶を交わし、各々迎えに来た両親や召使いの元へ向かって行った。