再会
じとりと汗ばむほど気温の中、彼女は黒のロングドレスにカーディガンを身に纏い、マルフォイ家を訪れていた。
豊かなハニーブラウンの髪を横に流したその女性は、出迎えたブロンドの女性とハグをして屋敷の中へと通される。
「ジル、久しぶりね?」
「ちょっとルーマニアの方に野暮用があって。ナルシッサは元気だった?」
「私のことはシシーって呼んでって言ったでしょう?」
「ふふ、ごめんなさい。それで、元気だった?シシーだけじゃなくてルシウスと大好きな私の甥っ子くんは」
ジルはいつもなら出迎えに来てくれていた甥っ子の姿を探してキョロキョロと見回すが。
「ええ、勿論!ルシウスは相変わらずだけど、ドラコは今年ホグワーツに入学なのよ!今日はダイアゴン横丁に買い物に行ってるの」
「そうだったのね、惜しいことしたわ。今年は誕生日も祝ってあげられなかったし、あの子を甘やかす折角の機会を逃してしまうし」
ジルとナルシッサはゆるりと話をしながら中庭へと向かう。
そこにはティータイム用に準備されたテーブルセットとスイーツを用意している屋敷しもべの姿があった。
「ドビー、ここは私がやるから他の仕事をなさい」
「ジルったら、気にしなくていいのよ?」
「私がシシーに紅茶を淹れてあげたいのよ」
床につきそうなほど頭を下げてドビーは持ち場へと戻っていった。
ナルシッサはジルが淹れる紅茶が好きだった。長く一緒にいたというのもあるだろうが、実に自分好みに仕上がる紅茶が好きなのだ。
「ジルの淹れる紅茶を飲むのは久しぶりね。ありがとう」
「ふふ、腕が鈍ってないか心配だわ」
和やかにティータイムを楽しむ二人の女性。
しばらくして、二人の元へようやくジルが待っていた人物がやって来た。
「ジル叔母様!」
「ドラコ、お帰りなさい。ちゃんと買い物は出来た?」
「はい!」
駆け寄ってきたドラコを難なく受け止めたジルは指通りのいいプラチナブロンドの髪を撫で付ける。