02
「今日は一限、体育だっけ?」
「うん。少し早めに移動しないとね」
お兄と一緒に出てきたからそんなに急ぐ必要は無いけど、着替えなきゃいけないからちょうど良かったかも。
「そうだ、桃子にもあげるよ。手出して」
そう言われて手を出すと、ころんと転がるピンク色の包みのキャンディ。
さくらにあげたものと一緒だ。
あっちは黄色だったけど。
「桃子はピンクが一番似合うよ」
「……ありがとう、雪」
真っ直ぐに見つめられて、少しだけ恥ずかしく思ったけどなんとかお礼を言う。
雪といい、お兄とかパパもそうだけど私の周りって美形が多すぎて困る……!
「さくらがはにゃーんってなるのもわかるかも……」
「?なんか言った?」
「っ、ううん!なんも言ってない!」
あぶないあぶない。
良かった、聞こえてなくて。
「そうだ、今日桃矢の部活終わるまで桃子は暇?」
「今日はパパが当番だから、暇してるよ」
「じゃあ桃矢が終わるまで一緒に駅前の喫茶店に行かない?美味しいところ見つけたんだ」
「行く!」
最近のマイブームは喫茶店巡り。
最近引っ越してきたはずなのに、雪兎が教えてくれる喫茶店って美味しいところばっかりですっごい楽しみなんだよね!
「あそこの喫茶店ね、桃のタルトが美味しいんだ。桃子と一緒に行きたいなーと思ってたんだ」
「ほほー!楽しみだなー」
そんな話をしていると、そろそろ着替えないと間に合わない時間になっていた。
お兄も戻ってきて、三人で移動する。更衣室は別で、男女で授業も分かれているので二人とはそこで別れた。
今日の体育は男子はサッカーで女子はテニス。
サッカー部のお兄の独壇場で、テニスをやっていた女子もお兄が登場すると黄色い声援を送り始めた。
これも毎度のことで、顔がいいお兄と雪兎は体育の度に、と言うか体育じゃなくても告白ラッシュがあったりする。
雪兎は試合じゃないのかコートとコートの間に立って試合を見ている。お兄がゴールを決めて試合終了。
目立つ二人を見ていると、どうやら小学校の方を向いて何かやっている。
……またさくらをからかって遊んでいるようだ。
その時、突風が起こった。立っていられないくらい強い風で、周りから叫び声が上がる。
「ッ……!あれは……?!」
「桃子!!」
「大丈夫?!」
思わず座り込んでしまった私のところへ駆け寄ってくるお兄と雪兎。
一瞬だけど、風の中に大きい鳥が見えたような……?
「お兄、雪。私は大丈夫だよ」
「良かった」
「…………」
雪兎が私の手を取って立ち上がらせてくれている間、お兄は険しい顔で鳥が消えた方向を見つめていた。
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