ファンパレスーツ五条記念SS

「はい。これ着てみて」
突然、五条さんがドレスを差し出してきた。
「なんですか、これ」
「何って君のドレス。今度の潜入捜査のパーティ、僕のパートナーとして出てもらうから」
「……はあ?私が、五条さんの、パートナー?」
潜入捜査に同行するのはいいとして、五条さんのパートナーという役割は必要ないのではないだろうか。確かに私は五条と何度かベッドを共にした関係だが、真剣な付き合いをしているわけではない。公の場でのパートナー役は流石に気が重い。
「一緒に任務行くのはいいですけど。そのパートナーって役割いります?」
「いるでしょ。今回のパーティの主催者は外国の人だからね。聞いたことない?向こうのカップル文化」
「パートナーいないと肩身が狭いってやつですよね?」
「そ。だからさ。一生のお願い」
五条さんは手を合わせて目をうるうるさせる。普通のアラサー男がやったら見苦しいだけの仕草。だけど五条さんなら様になるのが腹立たしい。……けど、カップル文化圏のパーティに一人参加は確かに辛いだろう。だから私はしぶしぶ頷いた。
「わかりました。いいですよ、一緒に行きましょう」
そして、パーティ当日。
五条さんが用意したドレスは私の体型にぴったりだった。無駄な肉感は拾わずに、ほどよく肌を見せるデザインで華奢見えする。……こんなぴったりのドレス、どうやって調達したのだろう。後で問いたださなければ。そう思いつつも、五条の腕をとってパーティ開場へと入場する。
「わぁ……あっちは大臣でこっちは大企業の役員……すごい顔ぶれですね」
「だからこそ呪詛師がこの場を狙ってるんだよ。じゃ、気を引き締めていこうか」
「はい」
さすがというべきだろうか。御三家出身である五条さんは政界や財界の大物にも顔が利くらしく、私が今までテレビでしか顔を見たことがないような大物にも挨拶をしていく。「先生、久しぶりです。こちらは婚約者の夢主で……」とにこやかに、流れるように私のことを紹介していく。最初は私も「夢主です」とにこやかに五条さんに合わせていたが、何人かに挨拶したところで、「あること」に気がつく。
「あの……五条さん。ちょっといいですか?」
「ん、なーに?」
「このパーティ、本当にパートナー必須なんですか?」
今まで挨拶した大臣も、大企業の大物も、誰一人として妻を伴っている人はいなかった。それを指摘すると、五条さんはしれっと答える
「パートナー必須?僕そんなこと言ったっけ?」
「は?だって主催が外国の方だからって」
「主催がカップル文化圏の人としか僕は言ってないけど?」
うまいこと言ってやった、風の五条さんに怒りが湧き上がる。
「は、はあ……!?じゃあ私を婚約者って紹介する必要はなかったじゃないですか?」
だけど五条さんはしれっとした顔のまま答える。
「あるよ。だってこうやって外堀埋めでもしないと、君は僕のこと真剣になってくれないでしょ?」
「なっ……」
五条が耳元に唇を寄せて囁く。
「……これでもう君は僕の婚約者だね」

五条
prev next

小ネタtop