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「ユリエルとニードだけで行くのか?」
それじゃあ早速出発しようか、となったとき、聞いたことのある声が聞こえた。「レニー……」とニードくんがさっきの声の主であろう名前を呼んだ。
「親父にでも言うつもりか?」
「いや、村長には言わない。その代わり、俺も一緒に行く」
あっさりと、レニーくんはそう言った。その言葉にニードくんは「なんだよ」とほっとしたように笑って、その提案を承諾した。
二人で行くことが不安だった僕からしても、レニーくんの提案は嬉しいものだった。リッカには言うなよ、と僕にも言っていたことを、ニードくんはしっかりとレニーくんにも伝える。
「んじゃ行くか。頼むぞ、ユリエル、レニー!」
「ニードくんもレニーくんも、怪我しないようにね」
「大丈夫だ! 俺がユリエルもニードも守ってやるから」
ニードくんが笑いながら、「かっこいいな、おい」と茶化す。レニーくんを先頭に、村の入り口に向かう。よくニードくんと一緒にいる青年が入り口に門番のように立っていた。
「今は村の外に出ない方がいいぜ。魔物がうじゃうじゃいるんだ。……って、ニードさん!? なんでニードさんが……」
「……た、たまたま用事がかぶったんだよ。いいからそこをどけろよ」
「いや、でも今外に出るのは、本当に危ないんすよ」
ニードくんは、いいからどけ、と力技でそこをどかせて、村から出ることに成功した。さっきの青年の言う通り、外に出るとあたりには魔物たちがうろついていた。ニードくんは「うわ、」と眉を潜めて、あたりを見回した。
レニーくんは行くぞー、とうまく魔物に気づかれないように歩いていく。僕とニードくんもそれについていこうとするが、気配に気づいた魔物たちが寄ってくる。
「ニードくん、」
「うおっ、危なっ」
「これでも食らえ! ……ニード、大丈夫か?」
「おう、なんとか。いやー、危なかった」
魔物の攻撃を食らいそうになったニードくんだったけれど、怪我はなかったみたいで、安心する。レニーくんの攻撃で、魔物は倒れた。レニーくんが持っているのは、普通の兵士が持つような剣で、そんなに大きな威力を叩き出すようなものではない……はずだ。でもレニーくんの攻撃は、大きな剣でも使ったかのような威力だった。
「戦士ってのは強いんだな」
「ニードたちより戦い慣れてるだけだろ。ほら、早く行かないと日が暮れるぞ」
レニーくんを先頭にして、なるべく戦闘を避けながら峠の道へと急ぐ。帰りが遅くなれば、リッカちゃんや村長さんに怪しまれてしまうだろう。日が暮れるまでに帰らないと。