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 見慣れた景色が見え、天使界に帰ってきたのだと感じる。やっぱり、天使界にいる方が落ち着くなあ。なんて、守護天使としてはどうかと思うけれど、確かにそう思う。

「さて、地上から戻ったら、長老オムイさまに報告するのが、守護天使のならわし。オムイさまは、長老の間にいらっしゃるはずだ」
「わかりました。お師匠さまも、一緒にですか?」
「いや、私は別の用があるから、先に行かせてもらう。……そうだ、先ほど魔物から受けた傷、きちんと治してもらってから行くように」

 ああ、そういえば、という感じだった。魔物から受けた傷なんて、本当にかすり傷で、そんなことは忘れていたほどだ。

「でも、早く長老さまのもとに行かなくてはならないのでは?」
「傷をそのままにして行く方が、見苦しいだろう。いいから、早く傷を治しにいくんだ」
「お師匠さまがそう言うなら……わかりました」

 僕は、自分では傷を治せないから、専門の天使に治してもらわなければならない。お師匠さまの言う通り、先に治してもらうことにしよう。

「それじゃあ、お師匠さま。また」
「……ああ」

 お師匠さまに手を振ると、戸惑いつつも手を振り返してくれた。優しいお師匠さま。僕はなんだかるんるんな気分で、傷を治してもらいにいく。

「ユリエルか。地上での任務はどうだった?」
「頑張りました! ウォルロ村って、とてもいいところですね。のどかで、平和で……僕の出番なんてほとんどない気がします」
「はは、そうか。さすがはイザヤール殿が守護していた村だ。しかし、気を抜くなよ」
「わかっていますよー。お師匠さまの顔に泥を塗りたくはありませんから! 立派な守護天使になってみせます」

 そうやって話している間に、僕の傷はすっかり治っていた。綺麗になった傷口を見て、思わず「うわあ……」と声を上げる。

 いくらかすり傷だったとはいえ、こんなに早く、綺麗に治るとは。これなら、地上で怪我を負っても安心だなあ。

「ほら、長老さまに報告に行くのだろう? 早く行かないと、イザヤール殿に怒られるぞ」
「そうですね。それでは、いってきます。こんなに綺麗に治してくれて、ありがとうございました!」

 傷を治してくれた天使にお礼を言って、長老の間への階段を上ろうとすると、うしろから声をかけられる。ユリエル、という聞き覚えのある声に、振り向く。

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