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 僕を呼んだのは、年が近くて仲のいい天使である、シルヴィーだった。しっかり者のシルヴィーには、僕もいつも助けてもらっている。

「シルヴィー、久しぶり!」
「久しぶり。初めての地上はどうだった?」
「すっごく楽しかったよ。村の中に大きな滝があってね、すごく綺麗なんだ。いつか、シルヴィーと一緒に行きたいなあ」
「そうだな。まあ、守護天使として働いている間は、そんな暇ないとは思うけど。俺たちが将来弟子をとって、弟子に引き継がせたあとにでも」
「わあ、いいね! シルヴィーが育てる子は、きっと優秀な守護天使になるだろうね」
「そうか? 俺はユリエルの育てる弟子の方が楽しみだ。逆に弟子に世話を焼かれてそうだな」
「もう。そんなことないよ! 僕もやっと守護天使になれたんだから、これからは今よりもずうっと、しっかりした天使になるんだ。いつか、」

 シルヴィーは僕の話を聞きながら、優しげに微笑んでいる。僕よりも先に守護天使として地上で務めを果たしている、いわば先輩のようなもの。早くも優秀な成績を残しているらしく、僕は彼の友人であるだけなのに、なぜか誇らしい。

 優しく微笑んだまま、シルヴィーは口を開く。

「お師匠さまみたいに、だろう?」

 僕の言おうとしていたことがわかっていたらしく、シルヴィーは言う。僕自身、あまり自覚はないものの、シルヴィー曰く僕の口癖は「お師匠さまみたいに」らしい。

「ユリエルは絶対にいい守護天使になれる。ちょっと抜けてるけど、優しいから。俺は昔からそう思ってるんだ」
「……そうかな? うん、シルヴィーが言うならそうだよね。シルヴィーに助けられてばっかりじゃなくて、いつか僕がシルヴィーの手助けをしたいな」

 僕の言葉にシルヴィーは笑う。馬鹿にする風ではなく、ありがとう、と言いながら。色んな人に助けてもらってここまで来られたんだから、僕もみんなに恩返しがしたいなあ。

 すごい守護天使になって、お師匠さまに恩返しをして。もっとしっかりした天使になって、シルヴィーが困っていたら助けられるようになって。

 そのために、僕はお師匠さまから引き継いだ仕事をちゃんとやらないと。のどかで平和なウォルロ村を守っていかないと。

「それじゃあ、俺は今から地上へ行くから。ユリエルはこれからオムイさまに報告か? 足止めして悪かったな」
「大丈夫だよ。僕もつい話し込んじゃったから。気をつけてね、シルヴィー」

 背筋をぴんと伸ばして、堂々とした姿で歩いていく彼を見送り、僕も階段を駆け上がる。

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