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 世界樹は天使界の一番頂上にあるから、そこへ行くには長い階段を上らなければいけない。階段の前には、守護天使以外が立ち入らないよう、見張りの天使が立っている。守護天使ではない天使が世界樹を見たいと思っていても、この見張りの天使がずっと立っているので、どうしても立ち入ることはできない。階段を上ることができるのは、オムイさまの許可を得た天使のみ。

 僕が近づくと、見張りの天使はすぐ僕に気づいた。きりっとしていて、いかにも仕事ができそうな雰囲気の天使。見張りをしている天使も、それなりに上級の天使だ。何せ神聖な世界樹を守る仕事のようなものなので、オムイさまに信頼されていて、かつ実力のある天使でなくてはならないからだ。

「オムイさまの命で、世界樹に星のオーラを捧げに行くのだな?」

 僕が頷くと、彼は階段の横に移動した。よろしい、と彼が言った。少し厳しそうにも見える表情を崩して、僕に笑いかける。

「今後ユリエルは自由に世界樹のもとへ行ってよいとオムイさまから仰せつかっている。……よかったな、お前は一人前の天使として認められたということだ」
「本当ですか?」

 彼の言葉は素直に嬉しかったし、オムイさまに認められたことも光栄だと思った。だけど、僕が一番認めてほしい相手は、彼ではなくて、オムイさまでもなくて、僕を一番近くで見守ってくれた、

「嬉しいです。でも、まだお師匠さまに一人前って言ってもらえてませんから。お師匠さまに一人前って言ってもらえるまで、満足せずに頑張ります」
「……そうか。イザヤール殿もよい弟子を持ったものだな」

 ふ、と微笑んで、彼は言う。よい弟子、とお師匠さまにも思ってもらえていたらいいな。

 彼にお礼を言って、僕は階段を上る。世界樹の根の周りには、数人の天使が集まっていた。療養中の天使たちだろうか。

 さらに階段を上っていく。最後の、真っ直ぐで長い階段の先に、世界樹があるという。僕は、少しわくわくしながら、長い階段を上った。

「わあ……!」

 青く輝く大きな樹が、僕の視界に入る。これが世界樹……。確かに、世界樹からは大きなパワーを感じる。

 一歩、世界樹に近づく。そっと手を伸ばすと、星のオーラはひとりでに世界樹に近づき、そして吸い込まれていった。星のオーラが世界樹に取り込まれた瞬間、世界樹はきらきらと眩く輝いた。

「どうだ、ウォルロ村の守護天使、ユリエルよ」

 世界樹の輝きが落ち着いた頃、うしろから声が聞こえて振り向く。

「お師匠さま」
「星のオーラを捧げられた世界樹は、実に美しいだろう」

 お師匠さまは僕の隣に並び、言う。僕はそれに頷き、「どうしてここに?」と訊いた。

「なに、少し様子を見にきただけだ。しっかりと役目を果たせたようだな、ウォルロ村の守護天使、ユリエルよ」

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