***
神治と上鳴が中学の時に付き合っていたと知って朝からずっとそのことばかりが頭の中で渦巻いて離れない。
もう終わったことのはずなのに、朝の2人の様子を見てから気になって仕方ない。
昼休みになれば上鳴は用事があるとすぐに教室を出て行った。
きっと神治のところへいったのだ。
本当なら俺も行きたいところだったが、神治に会う理由がなかった。
理由をつけなければ会いにいけない自分にもイライラした。
いつから自分はこんなにも女々しくなってしまったのだろうか。
「お、上鳴帰ってきた」
チャイムが鳴る前に教室に帰ってきた上鳴は、出て行ったときよりも清々しい顔をしていた。
その様子に気づいたのは俺だけではなかったようで、傍に居た切島や瀬呂が上鳴を呼んだ。
「なんか機嫌良いな。なんかあったか?」
「もしかして元カノとよりでも戻したか」
俺の知りたいことを聞く2人に俺は言葉を挟まず黙っていた。
「よりは戻ってねぇけど、いい感じにはなったかな」
「マジかよ!上鳴なのにやるな!」
「まさか上鳴に先越されるとはなぁ」
「お前らさりげにひでぇぞ」
気に入らない。
昨日まで距離を縮めれていたというのにたった1日で距離が一気に離れた気がした。
「放課後に勉強教えてもらう約束したから、そのときもう一度告るかなって…」
「漢だなお前!頑張れよ!」
苛立ちと焦りが募る。もし2人が付き合い始めたら、今度こそ俺の入る隙はなくなってしまう。
最近会話をするようになった仲の俺と、1度付き合った事があった仲の上鳴とでは選ぶ方なんて決まってる。
***
電気が勉強がヤバいと言うものだから、つい教えてあげようかなんて言ってしまった。
放課後になると荷物を持った電気がサポート科の教室までやってきた。
クラスメイトは足早に帰宅したり、工房に向かってしまったため教室には私しか残っていない。
「失礼しまーす」
『前に座って。分からないとこ教えるから』
2つの机をくっつけて教科書とノートを広げた。
教科書を開き問題を解く電気は難しい顔をしていた。
「わからねぇ…」
『そこはこの公式を使うんだよ』
「あぁ、なるほど」
私も自分の教科書とノートを広げて自分の勉強を始める。
しばらくシャーペンが文字を書く音と時計の針が動く音だけが響いた。
ふと視線を感じて顔をあげると、電気がこちらをじっと見ていた。
『なに?』
「いや…なんか懐かしいなぁって思ってさ」
『…そうだね。昔もテスト前にこうやって勉強してたもんね』
私たちがまだ付き合っていた頃。
放課後に2人でテスト勉強をした記憶が今でもはっきり覚えている。
いつも赤点ギリギリだった電気に勉強を教えていた。
そんな電気が雄英のヒーロー科にいる。
私の知らない間にすごく頑張ったんだろうな。
「癒月が教えてくれた勉強方法ずっと実践してめっちゃ勉強したんだ。頑張ってたら癒月にまた会える気がして」
電気は真っ直ぐ目を見て離さない。
その優しい目に私は惹きつけられるようで目が離せなかった。
私はその目に弱いんだ。
電気が私をひとりぼっちから助けてくれたときも、辛いときに隣にいてくれたときも電気の目は私を安心させる。
「そしたらまたこうして癒月と会えた」
『うん…そうだね』
「ずっと…ずっと癒月を忘れたことはなかった」
赤い夕陽が私と電気を包み込んだ。
電気が何を言おうとしているのか私にはわかった。
「癒月、俺ともう一度付き合ってください」