04

こんなにゆっくり風呂に入れたのはいつ以来だろうか。シャワーを浴びると今日あった嫌な事とかハゲ課長からかけられた暴言とか、そういう負の部分が全部流れていくようで心地がいい。

髪を乾かしてからリビングに戻ると、那由多の姿が見えなかった。

「那由多?」
「独歩お風呂上がってたんだ。気付かなかった」
「あぁ。……何してるんだ?」

声はキッチンから聞こえてくる。近付いてみると何やら料理を作っているようだった。

「料理?」
「そ。明日ゆっくり出れるからお弁当作ろうかなって。独歩の分も作るから」
「弁当か……久しぶりだな」
「ヨコハマに異動してから時間取れなかったしね。本当は作りたいんだけど」
「那由多は朝出るの早くなったしな……仕方ないだろ」

俺は、那由多がシンジュクディビジョンでの仕事に戻ってくれればいいとずっと思ってるんだけど。ヨコハマに行く前は、俺の外回りと那由多の昼休憩が重なれば飯くらいなら一緒に行けたのに。朝も那由多が先に出ることもなかったし……って、あれ?

「明日、朝遅いのか?」
「うん。今日もその都合でシンジュクから直帰だったし」
「ま、まさかシンジュクに戻ってくる、とか……!」
「ごめん流石にそれは無い……」

シンジュクに戻ってくるわけじゃない、のか。そう、か……俺はいつもこうだよな……ひとつのことを聞いただけなのに勝手に先走って那由多を不必要に謝らせて、詳しい事まで語らせて那由多の職は機密も多いはずなのに、こんなに細かく聞いて嫌われても当然、だから俺は駄目な奴なんだ……いつか那由多にも見捨てられるんだ……。

「違法マイクで精神汚染食らっちゃったチンピラさんを寂雷先生に預けてきたんだよ。明日はその事情聴取とヨコハマへの移送」
「……え、寂雷先生の所に……?お、俺も明日、先生の所直行なんだけど……!」
「先生から聞いてるよ。一緒においでってさ。午前の仕事終わったら病院の中庭でお昼食べよ」

確かに昼休憩終わってから会社に帰る予定にはなってるけど……けど……!

「い、いいのか……?」
「先生が移送の時間ズラしてくれたからね。お昼食べた後にヨコハマ戻るから大丈夫だよ」
「そうか……なら、のんびり出来るんだな」

身体の深いところからじんわり暖まっていくのを感じる。物理的ではなく、心理的に。
俺と話しながらも、料理の手をとめない那由多を後ろから抱き寄せる。危ないよ、なんて言われても今は聞きたくない。首筋に額をグリグリと押しつける。
そんな俺に呆れたのか、手を止め布巾で拭いてから、那由多の体が反転する。

「そんなことされたら弁当作れないじゃんか」
「たまにはいいだろ、那由多と揃ってゆっくり出来る機会なんてそう無いし」

向かい合った那由多を強く、つよく抱き締める。那由多の手も俺の背に回る。

あぁ、俺


幸せだな

(「充電終わった?」)
(「あと5分……」)
(「仕方ないなぁ」)