「あ、そーだ。那由多」
「ん?」
それはある日の夕食。「休みだったから張り切って飯作ってたら作り過ぎちった!晩飯食べに来てー!」と賑やかな文面で誘われ、独歩と2人、一二三の家で夕食をご馳走になっていた時のこと。
「ヨコハマの港付近で不審者情報とかってある?」
「いきなりなんだよ一二三」
「私の担当外だなぁ不審者情報は……。何かあったの?」
「んー……お客さんから聞いたんだけどさ、『ヨコハマ港近くの森の辺りでちょっと変わったヒプノシスマイクを持った外人が彷徨いてる』って」
なんだそれ。
「聞いたことないなぁ……ちょっと変わったヒプノシスマイクって……違法マイク?」
「いや、そのお客さんも見たわけじゃなくて最近良く聞く話らしくて。でももし本当ならヤバめじゃん?」
「それは確かにヤバいかもしれないが……ただの噂って可能性もあるだろ」
「だから那由多に確認してんじゃんかよー」
「まぁその噂が本当だったら治安的に良くないから……上司に聞いてみるわ」
「ん!よろろー!」
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「ってことなんですけどなんか聞いてます?」
「いや、特には何も無いですけど……というか貴女、ホストの知り合いなんているんですね」
「ホストの知り合いがいるというか、幼馴染がホストになったというか……まぁそれはいいんですけど」
「幼馴染がホスト、ねぇ……」
一二三から聞いた噂の部分だけを伝えたが、銃兎にも心当たりはないようで。やっぱり噂は噂でしかないんだろうか。そんなことを考えていると銃兎が立ち上がる。
「では、行きますか」
「へ?何処にですか」
「さっき言っていたその噂の現場に、ですよ。火のないところに煙は立たないと言いますしね」
確かに今日の仕事は粗方片付いている。が、そんな簡単に行ってもいいんだろうか。見回りを兼ねているだろうから、いいのか。彼の背を追って署から出る。
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……なんて気軽に外回りに出たのが昼過ぎくらい。目撃情報を集めて実際に近くまで行ってみると、どうやら本当に森の奥深くにその人物は居るらしいという情報は得られた。覚悟を決めて森に足を踏み入れたのが1時間前。
「本当にっ……!こんな奥に人が居るんですか!?」
「貴女がこの話を持ってきたんでしょう……!」
獣が通った跡のような細い道を進む。それでも顔の高さくらいの枝は切り落とされた跡があったり、足元の蔓は避けられていたりと、人の手が入っているのは見て取れた。
だがしかし、実際に見てみないと信じられないのも確かで。
「ほら……!何かあります、よ……」
先導する銃兎が絶句する。自分も遅れてそこに到達する。
この場所は、先程までの鬱蒼とした木々は伐採されており、軍隊の野営地のようなテントが複数存在していた。
「な、なんですかここ……」
「例の人物がここで生活している証、でしょうね」
火は消えていたものの、焚き火があったであろう場所には飯盒が。……まだ、熱を持っていた。
「……その人、もしかしてさっきまでここにいた……?」
「動くな。貴様等は既に小官の術中の中だ。動けば痛い目を見るぞ」
敵か味方か
(「じゅ、銃兎さん……」)
(「なんだ、こいつは……?」)