06

雑居ビルの中の廊下。
左右にズラリと並ぶ舎弟、と思われる方々。

「(シンジュクで散々違法マイクとかの取り締まりはしたけど、ヤクザと関わったことはないからなぁ……圧が強いな)」

入間さんに連れられて入って来たビルだが、彼は既に顔パスらしい。当然後ろに続く私もそのまま通される。

舎弟の皆さんの視線を受けながら、前を歩く入間さんについて行く。向かっていくのは一番奥の扉。そのドアノブをつかんで、ノックもしないまま中へと入る。

「左馬刻」
「やぁっと来やがったか、ウサちゃんよぉ」
「その呼び方はやめろって言ってんだろ」

そこにいたのは、先程写真で見た碧棺左馬刻。
解散した伝説のチーム、The Dirty Dawgのメンバーの1人。
ノックもせずに入った入間さんを咎めもせず、ヤクザに似つかわしい笑みを浮かべながら出迎えられた。
その態度にしろ呼び名にしろ、本当にただの担当警官とヤクザの若頭ってだけの関係かを疑いたくなってきた。そんなに親しくて問題ないんだろうか……。

「へいへい。んで、後ろのがお前が言ってた新しい信頼出来る部下ってやつか」
「えぇ。九十九」
「本日付けで入間銃兎巡査部長の補佐官として配属されました、九十九 那由多と申します。お会い出来て光栄です、碧棺左馬刻さん」

ようやく若頭の視界に入ったらしい。彼の笑みが消え、目が細くなる。私の発言を無視し、入間さんに向けて言葉を放つ。

「銃兎……てめぇが信頼してる奴ってのが女とはな」

またこれか。
H歴になって、女尊男卑の世の中へと変わった。中王区とそれ以外を分断する高い壁が出来た。それと同時に男女間にも大きな溝が生まれていた。中王区外では女尊男卑どころか、男性が女性を弾圧している方が多い。
警察組織内部でも散々言われてきた。その度に結果で黙らせてきたが。性別なんて関係ない、全ては個人の能力次第だ、と。

「彼女の実力は信頼に足る。シンジュク署の違法マイク検挙数の大半は彼女の手柄だ」
「ふぅん……」
「この世の中だ。この実力で女性という立場なら、どこまでも上に行ける。そんな奴が現場に拘って出世を蹴っている事実だけでも信用には足ると思うがな」

だからこそ、男性である彼にそこまでの評価をされていたとは思わなかった。数字だけでなく出世を蹴っている事まで知っていたとは。

「違法マイクの検挙、っつーことはラップできんだな」
「当たり前だろ。俺達が警察学校所属の頃から、警察や軍ではもうヒプノシスマイクの存在は明らかになっていたんだからな。当然、マイクを使うための講義もあったさ」
「俺『達』?」
「……九十九は同期だからな」

言いたくなさそうに口に出した、同期という言葉。それを聞いた若頭は肩を震わせ笑い出した。上司を見ると眉間にシワを寄せて苦い顔。
何だこの空気。

「うさポリ公よぉ……お前も存外カワイイところあんじゃねぇか」
「おい、左馬刻、それ以上は」
「未だに御執心の同期を引き抜いて部下にするとかよぉ」


爆弾発言

(「え」)
(「左馬刻てめぇマジでしょっぴいてやろうか、あぁ!?」)
(「おーおーやれんならやってみやがれぇ!!」)