シャドウって言うよりシャインだよね。

「…なぁ嬢ちゃん、お前に会って欲しい人が居る」
少しだけ警戒した目で告げたのは、主に色々見てしまった家族の男だった。まあこうなることはわかっている。自分でもヤバいなって思っているのだから。身近にメデューサとか居たらめちゃくちゃ怖いけど、自分がメデューサになっちゃったからね。相当怖い。皆から物凄く嫌われて、危険だからとかで折檻とかされちゃうかもしれないよね。樂って言う素晴らしいパトロン兼友人が出来たのに。いや、一番今困ってるのは樂か。私は男に同行すると返事をし、樂の方を見た。樂は当然着いていくという感じで気にもとめてない様子だ。心配して損したな。しかし、この中で一番私の正体に詳しいのは樂かもしれない。考えないようにしていたが、私を連れ去ったのもメデューサに初めてなったときであった。着いてきてもらうと色々助かる。
「弟も連れて行っていいですか?」
極めて、お淑やかに害は無いように。余分な敵視は御免だ。少し油断させるぐらいが丁度良いだろう。突然弟にしてしまったが、まぁ一番無難である。取り敢えず樂の手を取り、お姉ちゃんらしくするとしよう。パッと手を取れば、樂は真っ赤になり手を離そうとしてきたので無理矢理掴んで引っ張っていく。話合わせろよ、面倒くせぇなんて小声で言えば怯えた顔をしながら魂が抜けたようになった。彼のイマジンブレイカーになってしまったようだ、申し訳ない。樂ぐらいの学年だったら手を繋ぐなんて日常茶飯事だろう。きっと予想以上に照れ屋なんだろう、ちょっと可愛い。

連れてこられたのは火影様がいるとこだった。大方、里の危険要素みたいに思われてしまったのか。まあそう思われても仕方ないのは確かである。大人しくすること、私は私の平穏を守らなければならない。そうしっかり言い聞かせれば、少し緊張した心は落ち着いていった。
重たい扉が開かれれば見慣れた有名人がいる。テレビの中の人だったのに、こんな簡単に会えてしまった。あれ、レア度は高くない感じかな?私がメインで連れてこられたはずなのに、会話は火影様とあの男と樂で回ってる。大方纏まったようで、やっと私に話がきた。
「力は自分で制御出来るのか?」
一番大事なのはそこだろう。なんて答えればいいか、そんなのは決まってきた。制御出来ないなら、これから出来るようにすればいい。其の場しのぎでも、私ならなんとかなる。湧いた自身に委ねれば、形成された己は強固となる。
「もちろん、無理に危害を加えるようなことは無いです。先程のようなことを除き、ですが」
自己防衛としてこの力は本当に便利な物なのだ。相手を固めることができるなら、襲われることは無い。それに簡単に解除もできるから、死に至らしめる訳でもない。こんなに安全な力は他にないと思うのだが…この気持ちが相手に伝わることを願おう。
「お前の事情もなんとなくわかる。それに石は簡単に戻るんだろ?だったら安全…って言いてえとこだが、特異な存在なのも確かだ」
此奴なんて火影としてお前のことをよく理解しないといけねえ、と言葉を続ける男は心底面倒くさそうな顔をしていた。何となくキャラクターが掴めてしまった気がする。そして徐々に不安な気持ちが出てきてしまうのも仕方ないだろう。顔に出さないよう努めてるが、私の表情を見た樂が少し手を握ったためそれも難しかったのだ。重苦しい雰囲気の中火影様は口を開いた。
「シカマルの言う通り、俺は火影としてお前のことをよく知んねえとならねえ。だからよ…」

だからよ、俺の息子とかとよく遊んでやってくれねえか?

ぶわぁ、なんて表現が正しいのかわからないが……
鼻水と涙が一緒に出そうになるぐらいには
鳥肌が立った。
この里に、この火影のいる里に生まれることができて良かったと強く思えた。優しさの塊のような火影様は、私を見て瞬時にわかったのだろう。友人がいないということ、同年代の子の遊びを楽しめていないこと。今、樂以外に私の手を握り隣に立ってくれる人がいないこと。きっとこの人は孤独を知っている。私なんかよりもずっとずっと辛い思いをしたことがある人なんだ。そんな火影様に向かって強く頷けば、太陽のような笑顔で私の涙を拭った。それでも止まらないことに苦笑を浮かべる。やっぱ火影様すげえカッコイイよ。大人の魅力の中に少年らしさがまだ残ってるもん。でも子供がいるみたいだから結婚はしてるみたい。あの六代目の人みたいに一生独身て訳じゃないのね。少しショックを受けている自分に引きながらも、来た時より清々してる気持ちに嬉しくなった。


うわー、この人と同年代だったら絶対惚れてんな。
火影様は影っていうより…