めいいっぱいの弔辞お墓参りにいきたい、ってエマが言ってきたのはドラケンの49日が過ぎて、なんとなく周りが落ち着いてきた頃だった。エマはあれからずっとふさぎ込んでたから、ちょっとでも前に進めると思うとほっとした。
ドラケンがお世話になっていたお店の店長さんがお葬式とか法事を取り計らってくれていたようだけど、さすがに遺骨の引き取り手がいなくて、最初は自治体が管理する無縁塚に入る予定だったらしい。それがどう話が進んだのか知らないけれど、佐野家のお墓に入ることになったんだって。難しいことはよく分からないけど、きっと、マイキーはドラケンと仲直りをして、師範にお願いして手続きをしたんだと思う。
エマと約束した日はお花屋さんでお供えのお花を買って、コンビニで真一郎くんにコーラとドラケンがよく食べてたお菓子を買って、ふたりで手を繋いでお墓に向かった。いつも真一郎くんに会いに行くときはマイキーも一緒に行くことも多いけど、今日はエマとふたりきり。お喋りはほとんどしなかった。
佐野家のお墓につくとまず最初に掃除をして、管理舎で借りた水桶でお墓を浄めて、お線香をつけて、手を合わせる。真一郎くんに会いに来る度にずっとやってることだ。それが、今日からお話する人がひとり増える。
ドラケンがいなくなってから、みんな時間が止まったみたいなんだよ。エマとはちょっとしたことで、いつもバカみたいに笑い転げてたのに、なんとなくぎこちないんだよ。マイキーは泣いてこそいないけど、ずっとピリピリしてる。
ねえ、ドラケン。なんでいなくなっちゃったの?
お墓に聞いても当然答えなんて返ってこなくて、聞こえるのはエマのすすり泣く声だけだった。
(20210906)
title by さよならの惑星「安全なラブソング」
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