When I fall in love

真一郎くんにマイキーのことを男の子としてすきだってバレてから、前よりも一人で真一郎くんのお店に遊びに行くことが増えた。お店だけで会う新しいお友だちもできた。
だから、エマとお泊まりしたときに「真兄のことすきなの?」って聞かれたときは慌てて否定した。真一郎くんのことはすきだけど、今はもうそういう意味ですきなわけじゃない。
昔は真一郎くんのことがだいすきだった。今思うと、小さいこが自分のお父さんお母さんや幼稚園の先生をすきになるのと同じかんじだと思う。家にはお父さんはいないから、お父さん代わりというか。小さい時は本当の兄弟のエマやマイキーよりも真一郎くんにべったりで、ずっとお家で一緒にいられるふたりが羨ましかったし、子どものクセしていっちょ前に嫉妬することもあった。
わたしが1年生だったとき、圭介が足を骨折をしてしばらく空手にいかない時期があった。行きはひとりで道場に行って、帰りは暗くなって危ないからってお母さんの迎えを待つか真一郎くんが送ってくれていた。そんなある日、道場の近くで真一郎くんが同じ年くらいの知らない女の子とふたりで一緒にいるところを見たのだ。そのときに、真一郎くんよりうんと子どものわたしじゃ大人の女のひと──わたしからすれば、あの時も、今も、真一郎くんくらいの年のひとはみんな大人だ。──にはちっとも敵わないのだとなんとなく分かった。きっとこれが初恋の失恋だったのだ。かなしくて、苦しくて、その場を動けずにいて、気がついたら泣いていた。そんなわたしを最初に見つけてくれたのはマイキーだった。
あの時なんて言ってくれたんだっけ。「なに泣いてんだよ」とか「いじめられた?」とかだったかな。忘れちゃったけど、マイキーは泣いてばかりのわたしにずっとついていてくれた。たまに胴着の袖で涙でべちゃべちゃの顔を拭いてくれて、それがちょっと痛かった気もする。でもこれだけは覚えてる。「ベルが誰かにいじめられたり、怖い思いしたらオレが助けてやるよ」って言ってくれたのだ。そのときは真一郎くんのことでいっぱいいっぱいで何も思ってなかったけど、気がついたら真一郎くんよりマイキーの方がすきになっていた。

(20210808)
(20210918)


High Five!