七夕(八木/塚内)
仕事を終えた塚内直正が帰路につくと、道中で卯依とオールマイトに遭遇した。自然と三人で並び歩いていると、デパートの前で店員の男に呼び止められる。
―――七夕のイベントをやっているんです。短冊書いていきませんか。
人好きのする笑顔の接客に、塚内とオールマイトの足が止まる。気にせず立ち去ろうとしていた卯依は呆れたように動きを止めた大人二人を見上げた。その後渡された短冊とペンに、オールマイトはどこか楽しげな表情で卯依を見る。
「短冊に願い事なんてなんだかワクワクするね」
「しない」
「エッ」
間髪入れずに断言した卯依にオールマイトが固まる。
「紙にお願いを書いてなんの意味があるの」
「まあまあ、卯依。こういう行事だから」
「……」
苦笑しながら言う塚内に、卯依はしばらくむすっとした表情をしていたが、オールマイトや塚内が背を丸めて短冊に願い事を書く様子を見てため息を吐いた。それから卯依はささっと短冊に何かを書くと、紐を持って待機していた店員に手渡す。
「ありがとうございましたー!」
三人分の短冊を手に満面の笑みを浮かべる店員に揃って会釈をしてその場を離れる。「卯依、なんて書いたの?」「言わない」「そう言われると気になるなあ」「絶対言わない」なんてやり取りをする二人に笑いを堪えきれなかった塚内に、卯依の鋭い視線が突き刺さる。
「ごめんごめん」と笑う塚内を卯依はじっと見ている。今日はやけにご機嫌斜めだな……。そういえば今朝からオールマイトが事件を何件も解決していたっけ。なるほど。この不機嫌さにも納得がいった。
翌日、同じようにデパートの前を通りかかった塚内が気まぐれに短冊の願い事に視線を彷徨わせる。塚内と書かれた自分の短冊を発見し、そのすぐ隣に見知った二人の名もあった。
「ふはは!」
その場でひとしきり笑ってから、塚内は帰路に戻った。
本当に似たもの同士だなぁと満天の星空を見上げる。
オールマイトが卯依の願い事を知ったらどんな顔をするだろうか。卯依に睨まれたくはないので、教えないが。
「俊典さんが自分を大切にしてくれますように 卯依」
「卯依が怪我をしませんように 八木」