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試験が終了してから一週間が経った。緑谷出久がどうなったのかという疑問は、教師である俊典さんに聞くのも如何なものかと思い胸に留めている。筆記試験の方は自己採点で合格ラインを超えていた。実技試験の方もおそらく問題ないと思うけれど、結果が届くまではこの妙な焦燥は消えないだろう。

いつものように買い物から帰りポストを確認すると雄英高校からの封筒が入っていた。おそらく合否結果。俊典さんは家に居ないので一人で見てしまおうと、エントランスを歩きながら封筒を開ける。触った感触からして書類だけではなさそうだ。

「卯依ちゃん、こんにちは」
「!?」

突然声をかけられ、思わず手にあったそれを地面に落としてしまう。硬いものが床にぶつかる音が聞こえ、しまったと視線を落とした。すぐに拾い上げ、自分に声をかけた人物へと視線を向ける。ロビーのソファに座っていたのは同じマンションに暮らすご婦人だった。

「ごめんなさい私ったら、驚かせてしまって」
「いえ、いいんです。お気になさらず」
「壊れてないかしら、大丈夫?」

手元にあった平たい装置へと視線を落とす。頑丈な造りのようで傷やへこみもない。大丈夫だと告げようと視線をあげた瞬間に、ブォンという起動音をあげて空中に映像が映し出された。

「“わーたーしーがー!!”」

見覚えのある顔が見えた瞬間に、個性を発動させて電子機器のエネルギーを操作する。強引にエネルギーを弄ると、装置は妙な音と煙を出して電源を落とした。

「今のって」
「いいえ、なんでもありません」
「でもオール」
「気のせいです。そういえば、どうしてここに? 誰かと待ち合わせですか?」

私の言葉に、ご婦人はしばらくぽかんとしていたけれど、気を取り直したように「息子が一人暮らしを始めるから、その準備でね」と寂しそうに笑った。確か今年大学生になるお子さんが居たはずだ。

「そうだ、卯依ちゃんも今年高校生よね。ちょうど試験が終わった頃かしら。お疲れ様」
「どうもありがとうございます。先週、試験を受けたばかりで」
「あら、引き止めてごめんなさいね。家に帰ってゆっくり休んでちょうだい」

もう一度お礼を伝えてから足早にその場を去り、エレベーターへと乗り込む。持っていられない程熱を持ち始めたそれを、サイコキネシスで浮かせて家へと急ぐ。鍵を開けて中に入り、持っていた買い物袋と封筒を机に起き、装置へと手を伸ばす。

「あっつ!」

このままじゃ映像の続きも見ることができない。冷やす方法を考え、真っ先に視界に入ったそれに手を伸ばした。










玄関の開く音が聞こえ部屋から出ると、靴を脱いでいる俊典さんが居た。

「ただいま」
「……おかえり」
「雄英から合否通知が届いただろう。目を通したかい?」

やっぱり聞かれるか。なんて答えれば良いか分からずにとりあえず「うん」と言った私に、俊典さんは首を傾げつつ「合格おめでとう」と微笑んだ。

「緑谷少年も無事に合格した。四月から同級生だ」
「そっか、良かった」

俊典さんが廊下を進んでリビングへと向かうのをゆっくりとついていく。後ろめたいことをしてしまったせいか、視線があちこちへと彷徨うのが分かる。

「根津校長も喜んでいたよ」
「どうも」

キッチンへと直行した俊典さんに頭を抱える。もうだめだ。

「四月から一人暮らしだと考えると寂しい気も……」

冷蔵庫を空けてから一言も発さない俊典さんが、心底戸惑ったように私の名前を呼んだ。

「どうしてこの装置が冷蔵庫にあるんだ……?」

答えを待っているその視線から逃げるように顔を背ける。

「……事情があって」





ソファに座り、きんきんに冷えた装置を手に私の話を聞いていた俊典さんは徐々に震え始め、笑いを堪えきれずに吹き出した。

「……わざとやったわけじゃない」
「っ、分かっているさ……フ、……ッ、ゴホ!」

とうとう血を吐き出した俊典さんにタオルを差し出し、ソファの肘掛に腰掛ける。結局映像は見られなかったので俊典さんから直接、試験結果の内容を聞いた。特に実技試験での行動について詳しく講評を。他の受験生を助けた行いについても言及され、よくやったと俊典さんは頭を撫でた。
大きな手に頭を揺さぶられながら、私は久しぶりに気を抜くことができたのだった。