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何故か動かなくなってしまった出久の手を引いて歩く。下駄箱についたところで意識が戻ったようで、戸惑っている出久を促して靴を履き替えてもらった。

「身だしなみに厳しい人に育てられたから、他人のも気になっちゃって」
「……うん」
「良くないなあとは思うんだけどね」
「そんなことないよ。それだけしっかりしてるってことだから」

出久は眉を下げてそう言ってくれた。それからブツブツと「そうか、僕の考えすぎだったのか……」と呟いていたけれど、グラウンドに到着してからはそれも止まった。全員が揃ってから担任の相澤先生が言った言葉は、正直予想していなかったものだった。

「個性把握テスト……?」

麗日が入学式とガイダンスはないのかと聞いているが、ヒーローになるならそんな暇はないと一蹴されていた。ヒーロー科はB組もあるはずだけど、グラウンドには私達A組しか見当たらない。他にグラウンドがあるのか、それともA組だけなのか。

「雄英は“自由”な校風が売り文句。そしてそれは“先生側”もまた然り」
「……?」

それから相澤先生は男子生徒の一人にボールを渡してボール投げをやってみろと指示を出した。(ていうかあの男の子、入試の時に居た口の悪い男の子じゃないか。確か出久の幼馴染)

―――同じクラスだったのか……今まで気付かなかった。

「死ねえ!!!」

そう叫びながら投げられたボールが、爆発音と共に遥か彼方へと飛んでいく。相変わらず口が悪いな。流れてきた爆煙を手で仰いで遠退けながら、相澤先生の言葉に耳を傾けた。

「まず自分の『最大限』を知る。それがヒーローの素地を形成する合理的手段」

計測器には705.2mという数字が出ている。入試の時はよく見ていなかったけれど、掌を爆破させる“個性”のようだ。あの時は口の悪さしか印象に残っていなかった。A組の生徒は彼の記録に盛り上がりを見せている。生徒が「面白そう」だと思うようなことを、行事を潰してでもやらせる教師には見えないけれど。

「ヒーローになる為の三年間、そんな腹づもりで過ごす気でいるのかい?」

やっぱり、と顎を引いて言葉を待つ。

「トータル成績最下位の者は見込み無しと判断し、除籍処分としよう」
「はああああ!?」

驚愕で叫び出す生徒をよそに、相澤先生が髪をかきあげて言う。

「生徒の如何は先生の“自由” ようこそこれが雄英高校ヒーロー科だ」









「最下位除籍って! 入学初日ですよ!? いや初日じゃなくても……理不尽すぎる!」
「自然災害、大事故、身勝手な敵たち……いつどこから来るかわからない厄災、日本は理不尽にまみれてる」

相澤先生の発言に、自然と目線が下がっていく。ふいに蘇ってくる記憶に嫌気がさす。

「そういう理不尽を覆していくのが、ヒーロー」
「……」
「放課後マックで談笑したかったならお生憎……。これから三年間、雄英は全力で君たちに苦難を与え続ける。

Plus Ultra更に向こうへ”さ。全力で乗り越えて来い」

空気が変わったようにピリついている。さっきまでの雰囲気はどこにもない。しばらくの間、ここにいる生徒はこれから苦楽を共にするクラスメイトではなくなった。少なくとも今は、競争相手だ。この中から一人は除籍処分になる。

「こっからが本番だ」

俊典さんからはこんな受難があるとは聞いてなかった。まあ、事前にそんな情報を外部に漏らす人ではないか……。

「まずは50メートル走。出席番号順に二人ずつな。各自ストレッチして並べ」

その言葉に戸惑いながらも散らばり、それぞれでストレッチを始めた。確か種目は八つ。ソフトボール投げ、立ち幅とび、50m走、持久走、握力、反復横とび、上体起こし、長座体前屈。
私の“個性”が使える種目はたくさんある。おそらく各種目の順位ごとに評点をつけ、そのトータルで順位を決めるのだろう。“個性”が活かせないのは長座体前屈ぐらいだろうか。

「緊張する……。実操さんは?」
「 “個性”を活かせられない種目をどうするか悩み中」
「れ、冷静や……」