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颯爽と去っていった相澤先生を見送り、置いてけぼりだった私達も更衣室へと向かった。とぼとぼと歩いていると後ろから声をかけられる。

「実操さん、だよね? さっきのテスト凄かったね!」

振り返った先に居たのは浮いている体操服。確か出席番号の近い、透明化の“個性”を持っている女の子。

「ありがとう。ごめん、名前なんだっけ」
「葉隠透! よろしくね!」
「葉隠か、こちらこそよろしく」

見えない手と握手という人生初の体験に驚いていると、クラスメイトが続々と集まってきた。

「私、芦戸三奈! さっき先生に遮られちゃったけど、色々聞きたいことがあって!」
「俺は切島鋭児郎、お前の“個性”凄かったなー! ゼファーみてぇだった!」
「俺は飯田天哉、私立聡明中学出身だ。君の“個性”は確か、超能力だったと思うが……緑谷くんの傷の手当をする時に植物を出していたように見えたが、あれはどんな“個性”なんだ? 超能力の一種なのだろうか?」
「俺上鳴電気ね、彼氏居る? 今度お茶行かね?」
「オイラは峰田実。おっぱいのサイズ何ガッ」
「私は蛙吹梅雨。梅雨ちゃんと呼んで、よろしくね卯依ちゃん」
「えっと……」

怒涛の自己紹介祭りに脳みそが追いつかない。途中で小さな男の子に変なことを聞かれたけれど、梅雨ちゃんという女の子が舌で弾き飛ばしてくれた。梅雨ちゃんにお礼を言うと、頬を染めて嬉しそうに「いいのよ」と微笑んでくれた。優しい子だ。

「改めて、実操卯依……です。これからよろしく」

ぺこりと頭を下げ、聞かれた質問を思い出す。

「……超能力とは別に、エネルギーの変換で植物を創造できるんだ」
「それじゃあ、お花も?」

芦戸の言葉に「もちろん」と答えて手の中にピンク色のチューリップを創造する。わあ! と驚いて目を輝かせている芦戸に手渡し「これからよろしく」と笑って言えば、ピンク色の頬を赤く染めて「キャー!」と叫び始めた。葉隠が良いなあと呟いたのを見て、再び花を創造する。今度は右手にピンク色のゼラニウム、左手にオレンジ色のガーベラ。それぞれを葉隠と梅雨ちゃんに手渡して同じ言葉を言うと、梅雨ちゃんが小さく「卯依ちゃん素敵ね、王子様みたい」と呟いた。初めて言われた。

「男として負けた気がする……」

背の高い男の子の発言に、尻尾の生えた男の子が「俺も」と賛同していた。

「えっと」
「……ああ、俺は砂藤力道」
「俺は尾白猿夫。よろしく」
「よろしく。花いる?」

私の言葉に苦笑しながら手を左右に振る二人。これまで友達が居た試しがないので、距離の詰め方がいまいちよくわからない。女の子に対して花を贈るのは有効みたいだった。

「僕は是非欲しいな」

金髪の男の子がすっと顔を覗かせてやってきた。男の子が喜ぶ花ってなんだろう、と首を捻っていたら「青いバラが良い」という要望を頂いたので早速創造してみる。棘が刺さったら可哀想なので大きめの葉っぱも創造し、包んでから手渡すと固まっていた。

「棘、気をつけて」
「うん……」
「そういえば名前は?」
「僕は青山優雅。よろしく」

ふぁさっと髪を靡かせて言った青山に「よろしく」と答えた。頭の中で覚えたばかりの名前と顔を思い返しながら忘れないように心の中で唱える。更衣室へと向かう途中で、芦戸がチューリップを握り締めたまま顔を寄せてきた。

「実操ってゼファーの子供なんでしょ?」
「うん」
「ゼファーって……普段はどんな感じだったの?」
「?」
「ほら、オールマイトと同じでプロフィールのほとんどが非公開だったから。謎に包まれたヒーローって感じで、今でも分かってないことが多いし」

芦戸は好奇心を隠せない様子で頬を掻いた。

「答えられるほど知らないから」
「??」

更衣室前に辿り着いて、扉を開く前にばっと振り向いた。「初めに言っておきたいんだけど」と前置きをしてから口を開く。

「ゼファーについて、ネットで公表されてる情報以上のことを私は言えない。だから質問しても満足の行く答えは得られないと思う」

更衣室の中に居る人達にも聞こえるように、少し大きめの声で言った。どこか不満そうな表情をする数名に苦笑が溢れる。

「私は確かにゼファーの子供だし、彼と同じ“個性”も使える。だけどゼファーじゃないし、彼の代わりでもない。だから、ゼファーの子供としてじゃなくて、クラスメイトとして、仲良くしてくれたら嬉しいな」
「実操……」
「もし、みんなが良ければだけど」

みんなの表情を見ながら言うと、切島が涙を流しながら肩を掴んできた。少し吃驚しつつも受け止める。

「良いに決まってるだろ! 悪かった!!」
「私もごめん! もちろんクラスメイトとして仲良くしよう!」
「質問ばかりして済まなかった!! これからよろしく頼む実操くん!」

受け入れてもらえたことに安心し、男子と分かれて更衣室へと入っていく。真っ先にこちらを見ていた麗日と視線があったが、すぐに逸らされてしまった。