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「わーたーしーがー!!」
チャイムが鳴るのと同時に教室の扉が開けられる。視線を向けるとコスチュームを来た俊典さんが居た。
「普通にドアから来た!!!」
「オールマイトが……!! すげえや、本当に先生やってるんだな……!!!」
クラスメイトがざわついている中、私は活動時間が心配で仕方が無かった。もしものことがあったらこれまでのように“個性”を使って誤魔化そう……。
「ヒーロー基礎学! ヒーローの素地をつくる為、様々な訓練を行う課目だ!!」
勿体ぶってから出されたカードには、「BATTLE」と書かれている。
「早速だが今日はコレ!! 戦闘訓練!!」
「戦闘訓練……」
「そしてそいつに伴って……こちら!」
俊典さんの言葉に反応したように、教室の壁が間隔を空け、五列飛び出してくる。
「入学前に送ってもらった『個性届』と『要望』に沿ってあつらえた、
書かれている数字は出席番号だろう。盛り上がりを見せる教室の空気を横目に、公安で受けた戦闘訓練を思い出す。なんでもありじゃなければいいが……。
「実操さん、いこ!」
「うん」
俊典さんからの指示通り、コスチュームの鞄を持って更衣室へと向かう。麗日と二人で並んで訓練のことを話している間、俊典さんが微笑ましそうな目でこちらを見ているのがやけに気になった。
「実操さん、それ……スーツ?」
「そうだよ」
麗日がぽかんと口を開けて聞いてくるので、私は黒いネクタイを結びながら返事をした。今の私は実技試験の時と同じ格好だ。
「かっこいい……」
「……ありがとう?」
麗日がぼんやりとした顔つきでこちらをじっと見ている。不思議に思いつつも遅れるよ、とだけ声をかけてカバンに残った付属品に手を伸ばす。
紺のレッグホルスターを慣れた手つきでそれぞれの太腿に装着し、ナイフを装備する。それから残った黒のグローブとジャケットを手に持った。忘れ物は、ないか。
「とっても意外ね卯依ちゃん」
「そう?」
「だけどよく似合ってるわ」
緑色を基調にしたヒーロースーツを着て笑みを浮かべる梅雨ちゃんに、「梅雨ちゃんも素敵なコスチュームだね」と返す。梅雨ちゃんはありがとうと笑って更衣室を出て行った。
「ぱ、ぱつぱつや……」
愕然としたように言う麗日の言葉に、そっと視線を落とす。体型が分かりやすいというか、ぴっちりしているというか……。
「もっと……ちゃんと要望書いておけば良かった」
「似合ってるよ。麗日の“個性”とも合ってる」
恥ずかしそうにこちらを見る麗日に、念を押すように「素敵だよ」と微笑む。
「実操さん、たらしやね……」
「たら、?」
「それウチも思ってた」
耳郎の賛同の声を聞いて麗日がヘルメットを抱きかかえながら頷く。騙したりたぶらかしているつもりはないけれど……と困惑しながら更衣室を出ようとして、とんでもないコスチュームを着ている八百万を見つける。
―――色々とアウトじゃないのか……。
けどそうか、“個性”を使う際に服があったら邪魔なのか……大変だな。そう思って声をかけたら、意外にも本人はもっと面積の狭いコスチュームを希望していたらしい。十分だと思うよと耳郎と二人で声をかけ、そっと顔を見合わせる。肌の露出が最小限のコスチュームに、何故か安心してしまった。
▲ ▽
みんなに遅れてグラウンドへ辿りつき、麗日さんのコスチュームに動揺していた僕は、他のクラスメイトの中に紛れるように立っていた卯依ちゃんに気付いた。その格好はやっぱりコスチュームというよりは働いている大人の女性……。以前見た実技試験のときの格好にジャケットと装備品を付け加えただけの様だった。
「う、卯依ちゃん」
「出久、コスチュームよく似合ってる。その耳、可愛いね」
「あ、ありがとう……」
褒め言葉にマスクの下の顔が赤くなっていくのがわかる。卯依ちゃんはいつも下ろしている髪を編みこんで一つにまとめており、肩にかからないようにしている。普段の雰囲気とは違う卯依ちゃんにやけに緊張してしまい、視線が彷徨った。
「……その、どうしてスーツなの? 実技試験のときも思ったけど、あんまり運動には向かない、よね?」
僕の言葉に卯依ちゃんはきょとんとしている。それからしばらく考え込むように視線を移動させてから、少し首を傾げ上目遣いで僕を見た。ンッ!
「似合わない?」
「凄くよく似合ってます」
食い気味で言った僕に、卯依ちゃんは「ありがとう」と微笑む。なんだか手のひらの上でころころ転がされている気がする。全然僕は構わないんだけど。
「なんで……ッ!!」
「?」「?」
背後から聞こえた峰田くんの苦しげな言葉に振り向く。
「なんでパツパツスーツじゃねぇんだよ!!」
―――峰田くん……。
言葉を失う僕の隣で、卯依ちゃんは不思議そうにしている。峰田くんは「オイラはお前に期待してたのにッ! せめてタイトスカートとストッキングだろうが!!」と熱く語っていたが、卯依ちゃんが淡々と「そんな服装じゃ、戦闘にも救助活動にも向かないよ」と返していた。そのあともしばらく峰田くんはパンプスだの露出だのと騒いでいたが、嫌気がさした卯依ちゃんがオールマイトのすぐそばまで避難したことで強制的に落ち着かされていた。