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大音量で鳴り響く警報音を聞きながら、胸元を叩く。体を落ち着かせてから周囲を見ると、全員が驚いたように身を固くさせている。
「セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんはすみやかに屋外へ避難して下さい」
放送が終わると、大食堂に居た全員が慌ただしく立ち上がり出口へと向かっていった。飯田が先輩へと声をかける。校舎へ侵入する者が現れたと叫ぶ先輩の言葉に、周囲の一年生も怯えたように出口へ走っていく。埃が……。
「卯依ちゃん! 行かないと!」
「そばは時間が経つと味が―――」
「そんなことを言っている場合じゃないだろう! さあ立つんだ!」
飯田に強引に腕を引かれて出口へと向かわされる。遠のいていくそばに手を伸ばす。戻ってくる頃には水分を吸ってしまって歯応えが無くなっているだろう。……昼食はさておき、こんな人だかりじゃ大食堂の外へ出るのにかなりの時間がかかる。それに危険だ。避難の時の心得を知らないのだろうか。押さない駆けない……。
案の定地獄絵図のような光景に嫌気がさしてきた。何より私は人ごみが嫌いだ。今猛烈に空を飛びたい。
「どわーー!! しまったー!!」
人ごみに流されていく出久の腕を掴む。そのままずるずると前方へ流される波に身を任せ、スペースが出来た瞬間に“個性”を発動させて出久を引き寄せた。どん、と体がぶつかってすぐに手を回して出久を捕まえる。
「ありがとう、卯依ちゃ……」
「? うん」
腕の中ですっかり顔を赤くした出久を、はぐれないように抱きしめておく。去年から思っていたことだけれど、出久は異性に対しての耐性があまりにも無さすぎるのではないだろうか。この先苦労しそう。
「……」
ぎゅうぎゅう押されて潰れそうだ。人が多いせいか、空気が薄い気もしてきた。そもそも雄英高校への侵入者なんて、プロのヒーローが大勢、その卵も揃っているこの学校へ? 敵の襲撃だとしたら浅はかだと思うのは私だけだろうか。
喧騒の中でエンジン音が聞こえたと思ったら、頭上で「飯田くん!?」と叫ぶ出久の声がした。
「大丈―夫!!」
飯田の叫ぶ声を高い位置から聞こえ首を傾げる。ぴたりと人の動きが止まり、室内が静かになる。
「ただのマスコミです! なにもパニックになることはありません。大丈―夫!! ここは雄英!! 最高峰の人間に相応しい行動をとりましょう!!」
出久の腕の中で体を反転させて見上げると、出口の上に飯田が張り付いているのが見えた。麗日の“個性”か。人ごみから抜けて校舎の外を見ると、確かにマスコミが押し寄せている。ただのマスコミがあのゲートを越えてきたのだろうか。
警察の到着でマスコミは退散し、放送で安全が確保されたことで全員が席へと戻った。避難中の飯田の行動の甲斐もあり、重傷者は居ないようだった。昼休みが終わり、委員決めの続きが始まった直後、やけに舌の回らない出久が意を決したように口を開く。
「委員長はやっぱり飯田くんが良いと……思います! あんな風にかっこよく人をまとめられるんだ。僕は……飯田くんがやるのが正しいと思うよ」
こうしてクラス委員長は飯田に一任されることになった。他の委員決めも終わった放課後、荷物をまとめて帰宅しようと席を立った直後、「オイラは見た……」と注意して耳を澄まさなければ聞き逃してしまいそうな小さな声がした。不思議に思って振り返ると、同じように後ろを向いている出久の奥に、小さな体が見える。
「オイラは見ちまった……」
「何を見たの? 峰田くん」
「実操のスカートの下、太腿を締め付けるベルトが!!」
「!?」
峰田の発言に出久は肩を跳ね上げた。それと同時にクラスがしん、と静まり返る。女子は更衣室で見たことがあるのでいつも通りだ。なんでそんな反応をするんだ、と出久の横から顔を出して口を開く。
「シャツガーターつけてるから」
「!?」
「シャツに皺が出来るのが嫌なの。ていうか、何覗いてんの、変態」
私の発言に峰田は反省を見せることなく、椅子から立ち上がって出久の正面に立った。よだれを垂らしている異様な様子に少し緊張が走る。ぶつぶつと何かを呟いていたので耳を澄ませると「良い」と連呼していた。……普通にこわい。思わず出久のジャケットの裾を掴む。
「コスチュームの時も着けてんのかよォ……」
「……着けてるけど」
さらに息が荒くなった峰田を見て、出久の背中にぴったりと体をつける。出久はさっきから微動だにせず、壁になってくれている。
「あの鉄壁のガードの下にガーターベルトはエロ過ぎるだろォ、なあ!!」
ぐわっと近付いてくる峰田から逃げるように、出久を引っ張って後ろへと下がる。どん、と背中が誰かとぶつかって「ア!?」と叫ばれるがそれどころじゃない。じりじりと迫り来る峰田から逃げる私(と引っ張られている出久、押される爆豪)の図を見かねた飯田が峰田に注意してくれたけれど、多分、改善はされないと思う。……今度からは“個性”を使おう……。