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四限目が終わり、机の上を片付けて立ち上がる。出久と一緒に教室を出ようとした私は、飯田に呼び止められた。一緒にお昼に行こうという誘いに頷き、少し騒がしくなっている教室の後ろへと目を向ける。どうやら体育祭の話題で盛り上がっているらしく、じっと見つめていると飯田が独特なポージングで言った。
「ヒーローになる為在籍しているのだから、燃えるのは当然だろう!?」
出久が肯定するのを横目で見ていると、飯田の背後からお茶子の声が聞こえた。その声色はどこか強張っていて、低い。不思議に思いお茶子の顔を覗くと、初めて見る表情をしていた。
「頑張ろうね……体育祭」
「顔がアレだよ麗日さん!?」
形容し難い表情をしたお茶子は、足を肩幅以上に広げ、右腕を高く突き上げて叫んでいた。今朝の様子と比べると別人のようで、この四、五時間の間に何かあったのかと心配になる。
お茶子も交えて四人で大食堂へと向かう最中だった。出久がお茶子に、ヒーローを目指す理由を訪ねて返ってきた答えは予想していないものだった。
「お金欲しいからヒーローに!?」
「究極的に言えば」
恥ずかしそうに頬を染めて言ったお茶子に、飯田は生活の為に目標を掲げることは立派な事だと言った。腕が上下にビュン、バッと動かされていて、そちらにしか目がいかない。さっきからなんだこの動き……。
お茶子は言いづらそうに家業のことを話した。家は建設会社をしていて、お茶子は自分の“個性”で家業を手伝おうとしたけれど、両親はお茶子が夢を叶えてくれた方が嬉しいのだと言って背を押してくれたそうだ。
「良いご両親だね」
「うん。だから、私は絶対ヒーローになってお金稼いで、父ちゃん母ちゃんに楽させたげるんだ」
真面目な表情と口調に、少しだけ心配になって口を開く。
「あまり根を詰めないで、ほどほどにね」
お茶子はぽかんとしていたけれど、少ししてから柔らかく微笑んで頷いてくれた。それにほっとして足を踏み出す。
「そういえば、卯依ちゃんがヒーローを目指す理由、聞いたことなかった」
「私?」
「やはり、お父さんの影響か?」
お茶子の言葉に首を傾げて、飯田の言葉で動きを止める。
「私は別に」
「おお! 緑谷少年と実操少女が、いた!!」
突如お茶子の背後から現れた俊典さんの姿に、反射で肩が跳ねる。大声に驚いた他の三名も体が揺れて、俊典さんに顔を向けた。
「ごはん……一緒に食べよ?」
「乙女や!!」
▲ ▽
卯依ちゃんが「購買でごはん買ってから行く」と譲らず、残された僕とオールマイトは仮眠室へと向かった。そこで聞かされたのはオールマイトの活動限界時間が、USJでの戦闘により短くなってしまったことと、体育祭の話だ。オールマイトは、僕がいまだに“個性”のコントロールが出来ていないことを懸念していた。オールマイトに残された時間。自然と俯きがちになった僕を奮い立たせるように、オールマイトは叫ぶ。
「君に“力”を授けたのは、“私”を継いで欲しいからだ。君が来た! ってことを、世の中に知らしめて欲しい!」
「僕が来たって……でもどうやって」
言い終えた途端にガララッ! と扉が開かれる。大げさに体が飛び跳ねて扉へと視線を向けると、両手にビニール袋をぶら下げた卯依ちゃんが立っていた。
ノックしなさいよと困惑気味に言ったオールマイトに、卯依ちゃんは「ん」と短く返してから室内へと入ってくる。
卯依ちゃんは“個性”で扉を閉め、椅子を浮かせて僕の横へ移動させると、机の上にビニール袋を置いて腰掛けた。
「カツ丼買ってきた。あげる」
「あ、ありがとう」
袋の中身を広げていく卯依ちゃんをじっと身守る。相変わらず、凄い量だ……。仮眠室にあった小さめのテーブルは卯依ちゃんが買ってきた食べ物であっという間に埋め尽くされる。オールマイトは驚いた様子すらないので、これが通常なのだろう。
「それで話を戻すけど、雄英体育祭のシステムは知っているね?」
「ハッ、ハイ! もちろん!」
もくもくと箸を進めて食べ始めた卯依ちゃんから視線を外し答える。絶好のアピールチャンスだと話すオールマイトは、先日のこともあって気乗りしていない僕の返事のせいでソファごとひっくり返ってしまった。卯依ちゃんがぼそりと「埃が」と言って顔をしかめている。
ご、ごめん。僕がナンセンスなせいで……。