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「……『こんなん空飛び続けたら楽勝っしょ』 なんて思ってただろ実操! 甘い! 勿論空を飛ぶ生徒対策もしてるっつーの!!」

プレゼント・マイク先生の放送が耳に届く。モーター音は途切れることがなく聞こえ続けている。スピードを上げつつ振り返ると、最初に見たときよりも数が増えているように感じた。コース上に待機していたものが、私が通ったことで起動したのだろうか。

「そいつは最近出来たばっかの新作ロボ!! 空中を動くターゲットを検知すると照準を合わせてついてくるぜ!! ちなみに一度ロックオンしたらぶっ壊れるまで解除はされねえ!」

プロペラのついた全長50cm程の仮想敵が、私に向かって一直線に飛んでくる。少しでもスピードを緩めたらぶつかってきそうな勢いだ。操作している人間でも居るのかそういうプログラムに設定されているのか、私をコース外へと誘導するような動きをしている機体もいる。確かコース外に出たらいけないんだよね。視線の先には第二関門の入口が見える。綱渡り、空を飛べるなら簡単だ。飛び続けられたら、だけど。

私以外に空を飛ぶ“個性”持ちは見つけられない。そもそも最初にロックオンした人間を追尾するのだから、私より速い人じゃないと押し付けられない。誰だよ、私より速い人。ホークスか?

スピードをあげて距離を離してもいいけど、雄英体育祭という場でその選択は有りなのだろうか。速さ重視のヒーローの目には止まるかもしれないが、私の“個性”を最大限生かしたとは言えない。増え続けたモーター音で聞き辛くなっているが、プレゼント・マイク先生が放送で「1年A組 実操卯依、“個性”超能力」と紹介しているのは聞こえた。観客は私がゼファーの子供ということに気付いただろう。その直後に見せるのがスピードだけなんて。

―――ありえないな。

相澤先生に言われた言葉が頭をよぎる。

「父親との比較は……一生付き纏う問題だろうが、あれこれ言う奴ら全員を黙らせるぐらい、お前が強くなればいい」

俊典さんやナイトアイだけじゃない。知り合いのヒーローだって見てる。
もう落胆はさせない。
面倒事を避けていたのは昨日まで。後ろめたさに俯くことはもうしない。ゼファーと比較して力不足を嘆くこともやめる。そんな暇があるなら強くなるための努力をしよう。ゼファーに近付くんじゃない。
ゼファーを超えるために。
自分の目的を果たすために、血も“個性”も全部利用するって決めただろ。

第二関門の最奥まで飛んだところで右に急旋回する。飛行敵を真正面に捉えて動きを止め、顔を隠すように右腕を上へとあげる。

エネルギーを体の正面に集中させ、限界まで貯める。光の固まりが集まっていき、視界を埋め尽くす。飛行敵まで距離50m、40、30……。

十数メートルまで近づいたところで、右腕を大きく外になぎ払った。吹き飛ばされるようにしてエネルギーが前面と押し出され、空気に衝撃波が発生する。

衝撃波が飛行敵を破壊しながら扇形に広がっていく。飛行敵の破片は第二関門のゾーンに降り注いでいき、衝撃波によって生み出された突風が他生徒を吹き飛ばしていくのが見えた。……妨害行為、有りだよね。何しても大丈夫って言ってたし。


▲ ▽

第二関門の綱渡りに差し掛かり、息を整える。梅雨ちゃんは“個性”を使って難なく先に進んでいく。私も、と一歩を踏み出すより先に、サポート科の女の子の声が聞こえて足を止めてしまった。特別に許されたサポートアイテムの使用。勢い負けしつつ負けられない、と駆け出す。縄に足がかかる寸前、前方からとんでもない圧の風が吹いてきてバランスを崩した。

「うわあ!」
「急になに!?」

横を見れば芦戸さんも吃驚したように腕で顔を隠していた。私達の周りも、たくさんの人が尻餅をついて、倒れ込んでいる人もいる。「ぎゃああ」という叫び声が聞こえて目の前の崖下に目をやると、さっきのサポート科の子が崖下に落ちていくのが分かった。
自然に発生した風じゃないことは分かる。バッと顔をあげて遠くを見ると、この距離からでも分かる特徴の女の子が、そこにいた。

「あれ、実操!? さっきまでたくさんいたロボットは!?」
「風で吹っ飛ばしたんかな……さすが」

何度か見かけた卯依ちゃんを追い回していた敵の姿は空に無く、卯依ちゃんは背中を向けて飛んでいってしまった。

「私達も負けてられない!」

意気込むように拳を握って踏み出す。後ろから低く空気を揺らすような声が聞こえる。「いいなあ、あの“個性”」聞き覚えのある声だとは思ったけれど、振り返る余裕はなかった。