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轟くんの氷結でフィールドを区切られ、端に追い込まれている今。僕たちが浮上して逃げる動作を見せるたびに上鳴くんの放電が発動する。そんな中で強引に飛ぼうとして妨害を受けたとき、騎馬が耐えられるかどうか分からない。体制を崩している隙に、轟くんにハチマキを取られたら終わりだ。

―――なら、作戦通りに。

轟くんの騎馬が動くたび、卯依ちゃんが“個性”を使い即座に僕たちを移動させる。轟くんの左側、使わない炎の方へ。こうすれば氷結を使うとしても先頭の飯田くんが間にいてすぐに“個性”を使えない。他の騎馬が動けない今、距離を取って、タイムアップまでこれを維持できれば。

そう思った一瞬だった。目前に居た轟くんの姿が消える。飯田くんや上鳴くんも同様に。目にも止まらない速さで、僕たちの横を疾走し、

「は―――?」

初めて聞くエンジン音がフィールドに響き渡る。巻き起こる土煙と、歓声。試合時間、残り一分のところで、

「言ったろ緑谷くん」

1000万ポイントのハチマキが、奪われた。

「君に挑戦すると!!」

▲ ▽

「逆転! 轟が1000万!! そして緑谷急転直下の0ポイント!!」
「突っ込んで!!」

実況をかき消すほどの大声で出久が叫ぶ。他のポイントを狙った方がいいと常闇が提案するも、出久は取り返すしかないと叫ぶ。周囲をちらりと見渡していた私は、横から叫ぶようにして名前を呼ばれて体を硬直させた。

「卯依ちゃん! 行こう!!」
「!」
「取り返そうデクくん!! 絶対!!」

“個性”は発動したままだ。
すぐに動かせる、けど……勝つためには、

―――いや、今はその選択を信じよう。

「みんな、舌噛まないでね」

足元のエネルギーを騎馬の背後に集中させ、押し出すように前方へと動かす。ジェットコースターの加速と同じように、正面からの風や重力が体に降りかかるが、鍛えている人間が動けない程ではない。先ほどの飯田の必殺技程ではないけれど、離れた距離は一瞬で縮まる。若干崩れた騎馬をすぐに立て直し、立ち向かう。

「あああああああ!!」

出久の雄叫びが響き渡り、背筋になにかが奔る。出久が弾いた轟の左腕は“個性”を発動しようとしたのか蒸気が出ている。それよりも、“個性”が……コントロールできるようになったのか、二人共骨折はしていないように見える。

出久の右腕が再び轟へと向かう。首に巻かれたハチマキへと伸ばされ、それを掴んだ直後に離脱するように騎馬を再び移動させた。

「とった!! とったあああ!!」

出久の手に握られたハチマキが風に揺られて翻る。余白が多く見え、息を飲んだ。

「! 待って、それ、違う!」

自分が取ったハチマキに視線を落とし、出久が顔を青ざめさせる。最後に取ったハチマキ、一番外側だと思ったけれど……。しっかり対策してたなちくしょう。

「卯依ちゃん! 戻って!」

すぐに騎馬を翻し轟へと向かう。警戒度マックスの轟からハチマキを取るのは難しい。他の騎馬、ポイントはどうなってる。勝つために必要なポイント数は―――。試合終了のカウントダウンが始まる。上鳴の放電を常闇が防ぐ。白む視界の中で、無防備に飛んでくる爆豪の姿が、目に止まった。