8


カウントダウンが続く。

5、4、3

上鳴くんの放電を防ぎ、轟くんに手を伸ばすも、


2、1

―――届かない。

「TIME UP!」

空を切った手を強く握り締める。気付けば歯を食いしばっていた。悔しさで体が震える。三人の思いを背負って、それでも……届かなかった。

「ごめん……本当に……」

ゆっくりと騎馬から降り、俯きながら口を開く。

「早速上位4チームを見てみよか!」

プレゼント・マイクの実況が響く。

「デクくん」

麗日さんの呼びかけに、おそるおそる顔をあげる。麗日さんは緩む表情を堪えきれないようにして後ろを指差している。状況にそぐわないその嬉しそうな顔を不思議に思いつつ、指の先を見る。そこには常闇くんが目を伏せて立っていて、その隣には卯依ちゃんが並んでいた。二人の表情は涼しげだ。

「1位 轟チーム!」
「お前の初撃から轟は明らかな動揺を見せた。1000万を取るのが本意だったろうが……そう上手くはいかないな」
「無防備に単騎で突っ込んでくるなんて、取ってくれと言ってるようなもんだよね」

そう言う常闇くんから出ている黒影の口に、あるものは。
卯依ちゃんの持つ枝の先に引っかかっているものは。
それは―――。

「警戒の薄くなっていた頭の方を頂いておいた」
「これぞ飛んで火に入る爆豪」
「緑谷、おまえが追い込み生み出した轟の隙だ」

常闇くんの言葉にぐわっと涙がこみ上げる。突っ込みたくて仕方のない卯依ちゃんの発言が耳を通り抜けていく。

「2位 緑谷チーム!!」

▲ ▽

3位、4位と順位が発表される。あ、爆豪残ったんだ。試合終了が迫る直前、わざわざ近付いてきた爆豪にこれ幸いと植物創造、サイコキネシスの“個性”を使ってハチマキを奪った。かなり近付かないと操作が難しいから使うつもりはなかったけれど、運が良かったな。枝に引っ掛けるようにしてかっさらったハチマキは彼の持ち点だったから、てっきり陥落したかと思ったけれど。まあいいか。

滝のように噴出される出久の涙を見上げる。
干からびて死ぬのでは?

「クソがぁ……!!」

地獄の底から聞こえるような声が聞こえて振り返る。予想通りの人物が射殺さんばかりに私を睨んでいた。木の枝に引っかかるハチマキをゆらゆらと振り、見せつけるようにして持ち上げる。俊典さんの真似をして目を弓なりに、口角をあげて笑みを浮かべた。我ながら良い笑顔だと思う。

「ありがとう爆豪、踏み台になってくれて」
「殺す!!」

切島と瀬呂に抑えられている爆豪を、麗日が苦笑して見守っている。午前の部は終了。昼休憩の指示を受けて生徒達がフィールドに背を向けた。私もさっさと退散しようと足を進める。会場中から聞こえる歓声だけじゃない。これだけ人が集まれば、ただの話し声でも凶器だ。真っ直ぐ日差しが降り注いでくる。普段ならなんとも思わない音や光が煩わしくて仕方がない。

ずき、

頭の片側に走った鋭い痛みに、自然と力が入る。顔には出さずに、小さくため息を吐いてから足早に人ごみから遠ざかった。