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「瞬殺!!」
スタジアムにプレゼント・マイクの声が響き渡る。興奮のままに歓声をあげる観客の視線を、彼女は一身に受けていた。
「あえてもう一度言おう! 瞬・殺!!!」
「二回戦進出!実操さん!」
ステージにはスタート地点から一歩も動いていない卯依ちゃんと、彼女の周辺から生えている蔓によって拘束され空中に浮いている上鳴くんの姿があった。
試合開始直後上鳴くんの無差別放電が繰り出される直前に、卯依ちゃんの足元から植物が大量に出現しドームを作るように彼女を覆った。上鳴くんはその守りを崩そうと電気の威力を上げていき、最終的にショートしてしまったのだ。卯依ちゃんを囲っていた植物は意思を持ったようにスルスルと動き広がると、棒立ちしている上鳴くんに向かって一直線に伸びていった。蔓に体を拘束されてしまい、何より自分の“個性”によって戦闘続行が不可能と判断された上鳴くんの敗北が決定したのだった。
「植物を成長させて枯らすだけじゃなく、一本一本の植物を自在に操り、相手を拘束。……しかも攻撃を防ぐ盾にもなるなんて、やっぱり汎用性が高すぎる……!」
「でも、ステージの周りに植物なんて無かったよね?」
麗日さんが不思議そうに言った言葉に、僕は手元のノートから顔を上げ「ああ、それは」と口を開く。ステージでは卯依ちゃんが周囲の植物を枯らしているところだった。
「卯依ちゃんはそもそも自分で植物を創り出せるから、どんな環境でも植物操作の“個性”が使え……」
「あ、そっか! ゼファーの“個性”ってどんなときでも使える技ばかりだったけど、植物操作だけは違ったもんね」
「……」
「もしかして最初の戦闘訓練の時も、自分で有利な環境を作ってたんかな。てっきり、近くに植木鉢でもあったのかと思ってたよ」
「……」
「デクくん?」
自分で言ったことなのに言葉を無くしてしまった。そうだ。植物創造という能力はゼファーには無かった。つまり、植物創造は卯依ちゃんのお母さんの“個性”なんだ。
僕は、ヒーローノートの卯依ちゃんのページに大きく「超能力」と書いていた。お父さんであるゼファーの“個性”だけだと思い込んでいた。……でも、違う。超能力だけじゃない。いや、広く見れば同じエネルギーに関係した“個性”ってことになるんだろうけど……。
正確に言えば、卯依ちゃんの“個性”は「エネルギーの変換と操作」ってことになるのかな。
ゼファーは植物を操れるけど、それは周囲に植物がある環境の時だけ。でも、卯依ちゃんは自身で植物を作りだしそれを自在に成長させて操作できる。ゼファーには出来なかったことが出来る。足りないものを、補う“個性”。
―――もしかして
▲ ▽
試合を終え初めて生徒用の客席へと向かう。A組の席を見つけて空いた席を探す。あ、お茶子の隣空いてる。
「お、卯依ちゃん! お疲れ!」
「一回戦突破おめでとう、卯依ちゃん」
「すごかったねー! 実操の植物操作!」
「上鳴瞬殺だったな……結構余裕かましてたのに。おめでと実操」
「おめでとうございます、実操さん」
「ありがと……」
下の段へ降りるとクラスメイトが口々におめでとうと言ってくれる。なんだか居心地が悪くなってそそくさとお茶子と八百万の隣に座った。勝ったらお祝いするものなんだ……知らなかった。そういえば、さっき出久におめでとうって言ってなかったな。
「卯依ちゃんおめでとう」
「ありがと、お茶子」
「お、おめでとう。卯依ちゃん」
「ありがとう。出久も……おめでとう」
出久は目を丸めて数秒止まってからへにゃりと笑った。その手元にあるものに気付いて首を傾げる。
「デクくん、みんなの“個性”とかその対応とかまとめてるんやって。さっき卯依ちゃんのページ書いてたよ」
「え゛」
「ごめん、嫌だった!?」
自然と出た低い声に、出久は汗を流して謝る。お茶子も少しビックリして私を見ていた。
「……“個性”への対策練られるとか、されて嬉しい人いるの?」
「た、たしかに」
「まあ、個人のやること止めさせたりしないけど」
まだ少し不安そうな表情の出久に「好きにやりなよ。自由でしょ」と答える。それでも顔は暗かったけれど、書きたくてウズウズしてるのか鉛筆が揺れている。
「デクくん会った時から凄いけど、体育祭で改めてやっぱ……やるなァって感じだ」
「同感」
「?」