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試合は開始十数秒程で決着がついた。八百万が“個性”を使用する前に黒影の攻撃で場外へと押し出し、常闇の勝利。八百万の“個性”の汎用性は目を見張るものがあるけれど、今回は相性が悪かったかな。
休憩を挟んで始まったのは切島とB組の生徒。入試の時の良い人だ。
二人の試合の開始直後、出久がふらりと立ち上がった。お手洗いかと思って何も言わずに見上げる私に、出久は「麗日さんの様子を見てくるね」と言った。
「これまで麗日さんには何度も助けられたから、少しでも力になりたくて」
「うん」
「付け焼刃だけど、かっちゃんへの対抗策を考えてみたんだ」
出久がそういってノートを持ち上げる。私はしばらくそれを見つめてから「そう」とだけ口にする。口を閉じて黙り込む私に、出久は不思議そうな表情をしてから席を離れていった。
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選手控え室を訪ねかっちゃんの対抗策を伝えようとすると、麗日さんはありがとうとお礼を口にしてから「でも、いい」と言った。少しだけ困ったようにも見える表情に言葉を無くし、ついさっき客席で見た卯依ちゃんも同じような顔をしていたことを思い出す。
「デクくんは凄い! どんどん凄いとこ見えてくる。それに、卯依ちゃんも」
麗日さんは深く俯いて言った。
「騎馬戦の時、仲良い人と組んだ方がやりやすいって思ってたけど、今思えば二人に頼ろうとしてたんかもしれない」
「……」
「卯依ちゃんは“個性”の相性が良いから私を誘ってくれた。卯依ちゃんは、勝つための選択をしていたのに」
俯いたまま麗日さんがゆっくりと立ち上がる。飯田くんが騎馬戦の時に言った「挑戦する」という言葉を聞いて恥ずかしくなったと、麗日さんは自嘲気味に呟いた。
「麗日さん……」
「でもね、さっき卯依ちゃんが言ってくれたの。『爆豪倒して、このあと、私と戦おう』って。すごく嬉しかった」
「……」
「私は対等に戦いたい……だから」
麗日さんが顔を持ち上げる。下がっていた眉は強い意思を感じさせるように上がっていた。そのまま僕たちの横を通り抜け扉の前で振り返る。親指を立て必死で笑顔を作ろうとしているが、その手は小刻みに震えていた。
「決勝で会おうぜ」
麗日さんを見送り、飯田くんと二人で客席へと戻る。卯依ちゃんはステージを真っ直ぐ見下ろしていた。隣に腰掛けると、気付いたように卯依ちゃんが顔を横に向ける。対抗策は必要無かったと口にすると、卯依ちゃんは何も言わなかったが驚いた様子も無かった。そうなることが分かっていたかのように。
「必要無いって……卯依ちゃん、どうして分かったの?」
「……今はチーム戦じゃないんだから。トーナメントに載ってる名前は、全員ライバルでしょ」
「……」
「誰かが考えた策で勝ったとしても、胸を張れない。―――尾白が言ってたプライドってやつだよ」
卯依ちゃんが鋭い視線を僕から逸らし、ステージに現れた二人を見た。
「中学からちょっとした有名人! 堅気の顔じゃねえ。ヒーロー科爆豪勝己! 対 ……俺こっち応援したい! ヒーロー科麗日お茶子!」
一回戦最後の試合が今、始まった。