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「さァいよいよラスト!! 雄英一年の頂点がここで決まる!! 決勝戦 実操 対 爆豪!!

―――START!!」

先に動いたのはかっちゃんだった。両手の爆破によって距離を詰めるかっちゃんに対して、卯依ちゃんは片手を振り下ろして衝撃波を生み出し妨害する。前方の広範囲を吹き飛ばす衝撃波を避けることは難しい。かっちゃんもそう判断したのだろう。回避ではなくその威力に負けないよう体の後方で爆破を起こすと、すぐさま卯依ちゃんに迫っていった。

それを予想していたのか、卯依ちゃんはすでに地面を飛び立っていた。ぐいっと引っ張り上げられるように高度を上げる卯依ちゃんの後に、かっちゃんも続く。数メートル下を飛ぶかっちゃんに対し、卯依ちゃんが再び腕を振り上げる動作を見せた。先ほどよりも高威力な衝撃波が放たれ、かっちゃんが空中で体制を崩す。

―――衝撃波の威力は、実際に技が繰り出されてからじゃないと分からない。体制を崩す程度の弱いものか、それとも体が吹き飛ばされる程の威力か。受ける直前まで規模が分からないっていうのは厄介だ。

体がぶれただけで落下することはなかったかっちゃんの体に、青白い光の弾がものすごい勢いで向かっていく。
エネルギー弾。
ゼファーもよく使用していた技で、卯依ちゃんも障害物競走で使っていた。卯依ちゃんの指先から放たれたその攻撃をかっちゃんは爆破を起こして躱す。追撃するように二回、三回と続く攻撃も難なく躱していった。

光が卯依ちゃんの指先に集まり放たれるその瞬間に、銃声のような重低音が拡散する。一向に縮まらない二人の距離。再び衝撃波によって遠ざけられたかっちゃんは地面へと着地する。

卯依ちゃんが右腕を僅かに持ち上げる。その直後、エネルギー弾が当たって打ち砕かれたスタジアムの地面の瓦礫が宙へ浮いた。卯依ちゃんの手の動きに呼応するように、瓦礫は一直線にかっちゃんのいる場所へ飛んでいく。

小さな瓦礫は避け、避けきれない大きさのものは爆破させたかっちゃんが一際大きな爆破を起こし、空高く飛び上がった。それは卯依ちゃんのいる高度よりも上で、距離を詰めるように飛んだかっちゃんが両手を下へ向ける。

二人の距離は二メートルも無い。

かっちゃんの手の平から閃光が広がり、大きな爆発音が耳を劈く。吹き上がる煙によって二人の姿が消える。空気の振動がここにまで伝わってくる程の威力。麗日さんとの試合で見せていた火力より、少し弱いぐらいだろうか。

スタジアムがしんと静まり返る。食い入るようにステージへ視線が向けられる中で、あたりを包んでいた煙が徐々に晴れていった。

煙の隙間から見えたのは半透明の薄い膜のようなもの。
その中にいる卯依ちゃんには、傷一つついていなかった。

「卯依ちゃんが……バリアを使った」

湧き上がる歓声の中、プレゼント・マイクの実況が響き渡る。オールマイトの攻撃すら防ぐ最強の盾。かっちゃんはどうやってその盾を破るのか。

卯依ちゃんはゆっくりと地面へ降り立ち、バリアを解除する。白いシャボン玉のようなそれは空気に溶けるように霧散した。……やっぱり長時間の維持は難しいのかな。そもそも僕の仮説が間違っている可能性が……。

かっちゃんは間髪入れずに卯依ちゃんへと攻撃をしかける。バリアの使用後“個性”が使えなくなった様子をかっちゃんも目撃していた。その違和感に気付いているのだとしたら……バリア使用後の隙を突いていくだろう。

迫りくるかっちゃんに、卯依ちゃんは植物を作り上げて壁を形成していく。蔓では壊されると思ったのだろう。樹木が檻のように地面から伸びていき、卯依ちゃんの前方を埋め尽くす。上を越えていくと思っていたけれど、かっちゃんが選択したのは植物を律儀に爆破するというものだった。

「それは……キリがねーだろ。爆豪、飯田の試合見て警戒してんのか?」
「植物を放置したくねぇのはわかっけど……」

瀬呂くんと上鳴くんがぼそっと呟く。―――そうじゃない。植物への警戒は勿論怠っていないだろうけれど、かっちゃんの狙いはそこじゃない。

作り出し、成長させた植物が即座に爆破され消し飛んでいく。卯依ちゃんは僅かに顔をしかめてそれを見ていた。

最後の植物を爆破させたかっちゃんが卯依ちゃんに迫る。卯依ちゃんは腕を振り下ろし、同じように衝撃波を発生させる。障害物競走で見せた広範囲の衝撃波によって、かっちゃんは距離を詰められずに再び足を地に着けた。

「……―――」

深く俯いたかっちゃんが何かを口にする。それからしばらく、かっちゃんは客席に届かない程度の声量で何かを話していた。卯依ちゃんは静かに耳を傾けている。

なんだろう、と注視するよりも先に「ふっざけんじゃねえぞ!!」と叩きつけるような怒声が響き渡った。条件反射で飛び上がる僕の視線の先で、かっちゃんは怒鳴り続けている。

「言ったよなァ!! 全力でやれって……ゼファーの力使わずに、俺に勝てると思ってんのか!!」
「……」
「どこまで人を虚仮にすりゃぁ気が済むんだテメェは!!」

目を釣り上げて叫ぶかっちゃんの姿に、自然と体が震える。鋭い眼光の先で、卯依ちゃんは黙っていた。

黙って、かっちゃんを見ていた。

その、恐ろしいほどの無表情に息を呑む。
それは人形のようで、けれど、確かに怒りを内包している顔だった。