どの星の言葉も不自由


決勝が終わり、搬送ロボットによって卯依ちゃんとかっちゃんが運ばれていく。その様子を見て思わず立ち上がると、すぐ隣で麗日さんも立ち上がっていた。

「行こう、デクくん!」
「うん!」

あまり大勢で行ってもリカバリーガールに叱られてしまうから、代表で僕、麗日さん、蛙吹さん、切島くんの四人で行くことになった。駆け足で目的地を目指す僕たちの間に会話はなく、数分で出張保健所に辿り着くと扉の前には「治療中の為、立入禁止」というプレートが掛けられていた。

それからどれほど時間が経っただろうか。時間の経過がいやに長く感じるぐらい、不安に包まれていた。初めて見る卯依ちゃんの表情や様子を思い出している僕に、蛙吹さんは「リカバリーガールがついているんだもの。大丈夫よ」と声をかけてくれる。

「緑谷ちゃんが怪我をしたとき、卯依ちゃんも同じ顔をしていたわ」
「えっ」
「心配してないって言っていたけれど、彼女、あまり嘘が得意じゃないみたい」

蛙吹さんはケロケロと優しい笑顔を浮かべて言った。

「二人共、お互いがとても大切なのね」

ガチャ、と音がして扉が開く。
中から顔を出したのはリカバリーガールだった。

「治療は終わりさね。まだ寝てるから、静かにするんだよ」

顔を見合わせて室内へ入ると、卯依ちゃんとかっちゃんは並んだベッドにそれぞれ横たわっていた。ベッド横の椅子にはオールマイトが腰掛けていて、麗日さんが「デクくんのお見舞いにいた人……」と呟くのが聞こえる。オールマイトは心配そうに卯依ちゃんを見下ろしていた。

かっちゃんは両腕全体に包帯、頬や額にガーゼ。体操服の襟首から包帯が少し見えているから、上半身も包帯が巻かれているんだろう。卯依ちゃんも両腕に包帯が巻かれて、素肌が一切見えなくなっている。それと顔の右半分、目のまわりはガーゼと包帯で埋め尽くされていて、二人共、思わず目を逸らしたくなる姿をしていた。

「卯依ちゃん……」

麗日さんが足音を立てないようにして卯依ちゃんのベッドに近付く。その呼びかけに卯依ちゃんが目を覚ます様子はなかった。

「二人共、傷は残らないよ」

リカバリーガールの言葉にオールマイトが心底安心したように胸を押さえたのを見た。僕もほっとして肩の力を抜く。まだしばらく起きないだろうから、と促され出口へと向かう。オールマイトは残るみたいだ。

切島くんが扉を開くと、そこにはエンデヴァーが立っていた。

「エン……!?」

静かにするように、という言葉を思い出したのか、切島くんが自分の手で口元を塞ぐ。自然と道を空けるように避けると、エンデヴァーは無言で室内へと入ってきた。僕も吃驚して見上げていたけれど、エンデヴァーはちらりと僕を一瞥しただけで何も言わず、奥へと進んでいく。

静かに見守っていると、エンデヴァーは卯依ちゃんのベッドのすぐ傍で立ち止まった。あれ、オールマイトが居ない。

「あちこち火傷を負ってるけどね、痕は残らないよ」
「……そうですか」

エンデヴァーの低い声が室内に広がる。完全に出て行くタイミングを失った僕たちなんて一切気にしていない様子で、エンデヴァーとリカバリーガールは会話を続けている。

「炎の扱い方、あんたがちゃんと教えてやりな。ゼファーの時だってそうだったんだろう?」
「はい」

エンデヴァーの鋭い視線が眠ったままの卯依ちゃんに突き刺さる。仕切りカーテンの奥からオールマイトが顔を覗かせていることに気付くのと同時に、エンデヴァーは「失礼します」と言って扉へと戻ってきた。多分、滞在時間は五分も無かったと思う。

「……はあ」

エンデヴァーの背中を見送り、ぱたんと扉が閉まった数秒後、麗日さんが緊張をほぐすように息を吐いた。「ちょっと吃驚したね」という言葉に頷く。

「ゼファー繋がりで卯依ちゃんと知り合いだったんかな」
「た、多分」
「心配で来てくれたのね。ちょっぴり意外だわ」
「俺も……なんか、感動しちまった」

怖い印象しかなかったけれど、新しく知ったエンデヴァーの一面に驚いていると、「ほら行った行った」とリカバリーガールに背を押され、僕たちは部屋を出ることになった。