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オアシス都市チーシャンに辿りついたハルは早速アラジンの姿を探した。道中に立ち寄った店で食料や水を買ってから教えられたアリババの家へと向かうと、酷く動揺した老人とすれ違った。

声をかけるかハルはしばらく迷っていたが、その足取りはしっかりとしたものだったため再び足を進める。鋼鉄の鎧兜を纏ったハルはかなり目を引くようで、曲がり角や建物の影からハルを見ている気配がいくつもあった。

「おっ、よう! こっちだこっち!」

足音に気付いたのか、アリババが家から体を出してハルを呼びつける。ハルは一度足を止めかけたものの、声に招かれるまま近付いていく。馬を外に繋いで荷物を取り外し、家の中に入っていくハルを見ていた者達は、アリババの知り合いだったのかと納得して散らばっていった。

大人がある程度警戒心を消して去っていったのに対して、近所に住む子供達は変わらずその場に留まっていた。ハルのことが気になって仕方が無かった。まるで物語に出てくる騎士の様で。ピカピカと輝き、冷たさすら感じられる鉄の鎧。血のように赤いマントを風に靡かせて、その腰には立派な剣。

西方の国ではああいう騎士が多く存在していると噂では聞いていたものの、戦争とは無縁のこの地では見ることもない。初めて見る騎士の姿に、子供達は好奇心と少しの恐怖を抱いてその場に居たが、呼び戻しに来た親に引かれる形でその場を去っていった。




アリババの家でハルが見たものは、分かりやすく不貞腐れたアラジンの姿だった。

「なにがあったのですか」
「いや、おれもよく分かんねえんだよ」

真剣に頭を悩ませているアリババを見て、ハルは再びアラジンへと視線を落とす。具合が悪いようでは無かったので、ハルは荷物の中から果実を取り出してアラジンへと手渡した。アラジンはまるで水分の欠片もない渋柿を食べているかのように、もしゃもしゃと果実を食べ進める。その表情は暗い。

ハルは面頬を上げてから果物を齧った。不作だったものを買わされたのかもしれないと思ったが、口に含んだ果実は甘く酸味が聞いていてとても美味しかった。もぐもぐと無表情のまま果物を食べていくハルとアラジンを、アリババはただ見守っている。

「あなたもどうぞ」
「お、おう。ありがとよ」

三人が果物を食べ終えると、気を取り直したようにアリババがハルを見て口を開いた。これから自分は迷宮を攻略するから、アンタにも手を貸してほしいと。ハルはしばらく口を閉じて思考してから頷いた。途端に明るくなるアリババの表情とは裏腹に、アラジンは未だ落ち込んでいる。

「それじゃ報酬の取り分だけど」
「迷宮内の宝物に興味はありません。けれど、一つ条件が」
「?」

話しを遮って言ったハルに驚いてアリババが口を閉じる。ハルは「私は剣を探しています」と言い放った。

「剣?」
「今持っている剣と対になる剣が、この世のどこかに存在するのです。その剣を、私より先に貴方が見つけたとしても、誰かから譲り受けたとしても、私に渡していただきたい」
「……」
「それを受け入れてくれるのであれば、迷宮でもどこへでも同行しましょう」

ハルの真剣な口ぶりに、アリババの浮き足立った気持ちは強制的に落ち着かされた。アリババは剣の一つならまあいいか、と軽い気持ちでそれを承諾した。

その後不貞腐れたままのアラジンを連れて夜のお店に行くことを決めたアリババは、ハルをどう言いくるめて家で待ってもらうか頭を悩ませる。しばらく何を言いたいのか分からずに黙っていたハルだったが、アリババが口ごもりつつ言った「男だけの、夜の」という言葉で全てを察して静かに送り出した。あまり羽目を外しすぎないように、というハルの忠告を忘れてアリババはこの夜とんでもない目に遭うのだが、ハルにはあずかり知らぬ話である。