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ヤムライハとの修行が始まってから別行動だったアラジンに、モルジアナが眷属器のことを説明している。その横顔をアリババがじっと見つめていた。

「なぁ、モルジアナ。そういや気になってんだけどさ」

切り出したアリババはこう続けた。ずっと自分たちと居ていいのか。チーシャンで「故郷に帰る」と言っていたモルジアナの姿を思い出しながら言ったアリババに、モルジアナはきゅっと口を結んだ。

モルジアナはいつでも故郷へ行くことができる。
その手段は揃っていた。
だが―――

「私も、シンドバッドさんからアル・サーメンの話を聞いたんです」

モルジアナの言葉にアラジンとアリババの顔が強ばる。

「私は、バルバッドでの戦いが頭から離れません。今でももちろんあなた方への恩返しのため、でも、もうそれだけではなく……」

脳裏に浮かぶ光景。
剣を、杖を手に戦う三人の背中を、自分はただ見ている。

「虐げられる人たちのために戦うあなた方と同じように、―――私も一緒に戦いたいのです。どうか、お供させてください!」

三人に傅くようにして膝をついたモルジアナにアリババは狼狽える。「お供」なんて、と戸惑いを隠せないアリババに対して、アラジンは嬉しそうだ。ハルは静かに見守っている。

「モルさんが一緒ならうれしいし、頼もしいね!」
「あの……お供してもいいんですか?」

あっさりと承諾されたことにモルジアナは動揺していた。問い返したモルジアナにアラジンは笑う。モルジアナがそうしたいのなら、そうすればいい。

「これから先、ずっとそうさ! ね、ハルさん!」
「―――モルジアナが望むのなら。あなたにはその自由があるのですから」

アリババとアラジンは喜び、ハルはモルジアナを見つめていた。自然と握っていた拳を胸の中心に押し当てる。それから掌を見る。

(許してもらえた……)

―――いや、許可などなくても、やりたいようにしていいと。三人と共にこの力をふるってもよいと……これから先もずっと、ずっと?

三人が並ぶ姿を目に焼き付ける。ドキドキとうるさいくらいに心臓の音が体から響いて止まない。内側から叩くように鳴る重い音が、ずっと続いている。

(この落ち着かない気持ちを、どうしたらいいのかしら)



アリババとアラジンが豪勢な料理を堪能している正面で、ハルはいつものように水を飲んでいた。面頬をあげているハルに、遠くから女性の視線が突き刺さっている。アリババが複雑そうに(若干の羨望を交えて)それを見ていると、太鼓を鳴らす音が大きく鳴った。規則的に鳴り続ける楽器の音にあわせて、広場で女性たちが踊りを始める。アリババの正面で、ハルが杯を持つ手が止まった。
兜の下から見える薄い唇は僅かに開いている。

「いいぞー飛び入りのねーちゃん!」

耳に入った言葉がやけに気になりアリババは振り返った。
そこで飛び跳ねているのは見覚えのある赤髪の少女。

「モルジアナじゃねーか!」

太鼓の音に合わせるようにモルジアナは高く飛び上がる。地面を強く踏み、装束を翻して美しく踊り続ける女性たちの中で、モルジアナは感情のままに体を動かしていた。少女の純真さと力強さを合わせたモルジアナの踊りにアリババは目を奪われる。なんの踊りだろう、と楽しそうにアラジンが呟く。アリババは返した。
分からないけど、きまってる。

「キレーだぞーモルジアナーっ!」

くるりと回っていたモルジアナの耳に届いたアリババの言葉。
すーっと心に入ってきたそれに、モルジアナは気付けば笑っていた。
嬉しくてたまらないように、年頃の少女のように。

満開の笑顔を見てハルは杯の水を一口飲んだ。
やはり花の精だったな、と目の前の光景に感嘆しながら。





「お姉さんたちもキレイですね!! その服似合ってますよ! まるでお花の妖精みたいだ!!」

周囲の女性たちにそう言ってまわるアリババの姿を見たモルジアナは、感情のままに地面を踏み荒らした。
その感情と行動の理由はまだ、本人には分からない。