パパゴラス鳥を狩りに行こう
「パパゴラス鳥?」
「うん。アリババくんがとても美味しかったって言ってたんだ」
目を輝かせ、見たことのないパパゴラス鳥を想像するアラジンを、ハルはじっと見下ろす。
「少し前にモルさんが狩りに行ったんだけど、捕れなかったって」
「……モルジアナが? それほど素早いということでしょうか」
「うーん」
腕を組んで首をひねるアラジンに、ハルが小さく頷く。
「分かりました。では、私が行きましょう」
「やったあ!」
期待の眼差しを受け、ハルは装備を携えるとすぐさまシンドリアの森へ向かった。
その数十分後、アラジンから「ハルがパパゴラス鳥狩りに行った」と聞いたアリババとモルジアナは、大慌てで緑射塔を飛び出す。血相の変わり様に、アラジンも追いかける。二人はつい数分前に、パパゴラス鳥が繁殖期に入ったためしばらく森に行かないようにという忠告を、聞かされたばかりだった。
ジャーファルやマスルールと伴って森へ入った五名は、異様な静けさが広がるシンドリアの森を進んでいく。ウネウネと伸びた幹が特徴的なバオバロブ、その根元で小さく丸まっているオラミー。母親の尾の中では子供たちが恐怖に震えている。
森の奥からは怪しげな鳴き声がこだましている。マスルールが一人、森の様子を見に行く背を、アリババが固唾を飲み込んで見送る。それから十分もしないうちにマスルールは戻ってきた。その横には探していた人物の姿もある。ハルの両手にはおお振りなパパゴラス鳥が二鳥握られており、暴れていない様子から、既に事切れていることがわかる。
「ハル、怪我はありませんか」
「はい。お手数をかけてしまい、申し訳ありません」
パパゴラス鳥を握ったたまま頭を下げるハルに、アラジンは「わあ!」と喜びの声をあげ、モルジアナは無言で目を輝かせている。マスルールも何も言わないが、じっとパパゴラス鳥を見ていた。食事の直前にジャーファルに連れ出されたので、空腹なのである。
「それにしても、すっげーな、ハル……」
「さすがです」
アラジンとモルジアナの言葉に、ハルは鎧の下で僅かに肩を下げる。その後全員で危険区域を離れると、ジャーファルとハルはその場で下処理に取り掛かった。ジャーファルは「肉付きの良いのを仕留めましたね」と笑顔で、ハルは淡々と彩り豊かな羽を毟っていく。
アラジンは慣れたように達観した眼差しでそれを見届けていたが、ただ一人、アリババは口元を引きつらせながら、その様子を見ていた。自分がまた食べたいと口にしたことが発端だが。
―――味わって、食うからな。
裸にされていくパパゴラス鳥に敬意を評し、アリババは強く決意するのだった。
繁殖期に縄張りへ侵入し、リーダー格二匹を秒で仕留めて去っていった鋼鉄の人間を、パパゴラス鳥が新たなボスと認識することになったのは、また別の話である。