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たまに聞こえるマルバスの怒声やアモンの叱りつける声を遠くで聞くハルの表情は暗い。鎧で見えはしないがその胸中に気付いたアリババが心配そうに名前を呼んだ。
「なんか、巨人が増えてるけど。あれ、誰だ?」
ハルの剣から出てきたことは見ていなかったアリババが心底不思議そうに呟く。そういえば迷宮を出たら話しをすると約束したのだった、とハルは思い出した。そうなれば金属器のことだけではなく、自分の出自のこともいわなければならない。
「アリババ。私はあなたたちに、たくさんの隠し事をしています」
「?」
「あなたには砂漠で命を救われた恩がある。だから話すべきだと判断しました」
「ハル?」
「これを知ったらきっと、あなた達は私のことを」
言葉につまったハルの肩を、アリババが叩く。ハルが見たのは眉を下げて優しい笑みを浮かべるアリババの姿だった。
「俺だって、おまえらに言ってないことがたくさんあるんだ。大声で言えないようなことを、俺はしてきた」
「……」
「けど、話すよ。ここから出たら、全部話す」
「―――アリババ」
「だから話して欲しいって訳じゃねえんだ。ハルが、話したいって思えるようになるまで、俺は待つよ」
歯を見せて笑うアリババに、ハルは鎧の下で目を見開いていた。
「だから、無理して言わなくていい。それに何を聞かされたって、俺たちは友達だ! そこはぜってぇ変わらねえ!」
その言葉にほっとしたような妙な気持ちを抱きつつ、小さく頷く。日差しのような暖かさを感じさせるアリババの姿に、ハルは自然と笑みを浮かべていた。それに気付いてハッと体に力が入る。―――最後に笑ったのはいつだっただろうか。ずっと気が抜けない日々を送っていて、笑顔を浮かべたことなんてもう何年も―――。
「ハル?」
再び俯いたハルの顔を覗くようにアリババがかがむ。すぐにハルの顔は持ち上げられ、アリババは鎧の隙間から輝く青磁色を見た。
「ありがとう、アリババ」
鎧で見えていなくとも、その表情が浮かべている感情は、なんとなく予想ができた。