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突然床が大きく揺れ動き、宝物庫が今にも崩れ落ちそうになる。アモンによって外への道が開かれ、浮かび上がった八芒星の陣に全員が逃げ込む。ハルも馬を連れて陣の中に入ると、アモンが大きな声を出してモルジアナ達に呼びかけた。
動かないジャミルをモルジアナは気にかけている。それを見たアリババは驚いたように叫んだ。置いていけば自由になれるのに、どうして手を伸ばすのか、と。
ジャミルへと伸ばしていた手がぴくりと固まる。頭の中に流れ込んでくるのはこれまでの記憶。恐怖。植えつけられてきた痛み。
―――それでも、モルジアナはジャミルへと手を伸ばす。
それを遮るように、大きな体がモルジアナの目の前に立った。
「ゴルタス!? 生きて……」
腕を広げて動かないゴルタスに、モルジアナは退いてと頼む。領主を置いてはいけないというモルジアナに、ゴルタスは初めて言葉を発した。こんな男を外に出してはいけない。自分も外へ出るべきではないと。
―――故郷へ帰れ、モルジアナ。それがおれの最後の望み。
そう言ったゴルタスは己の剣でモルジアナの足枷についた鎖を断ち切った。ジャミルを背負ったゴルタスはモルジアナを見下ろす。モルジアナはその視線に押されるように、陣の中へと入っていった。
迷宮が崩れ始め陣が空中に浮かび上がる。光の壁に囲まれたモルジアナは手をついて、迷宮の奥へと進んでいくゴルタスと領主の姿を見続けた。ジャミルが上を見上げて自分に気付く、その姿を隠すように宝物庫の天井が崩れ、二人は見えなくなった。
呆然と外を見続けるモルジアナを、アリババ達は黙って身守る。その背にかける言葉も見つからず、陣は光の膜である出口を通った。
再び目を開けたアリババは辺りを見渡す。また一人なのかと落ち込みかけたときにアラジンの声が聞こえて、二人は近付いて迷宮の話をした。危ない目にあった、途中で見つけた光の卵があれば高く売れただろう。それからアリババの思い描く夢を楽しげに語ったあと、アラジンは寂しそうに呟いた。僕たちの旅もここで終わりだね、と。
アリババは思い返す。アラジンとハル、三人で迷宮の生物と戦って、宝を見つけて、楽しく話しをした道中のことを。それから改めてアラジンにお礼を言った。お前が居なければきっと迷宮も攻略できなかった。自分はいざという時に足がすくんで動けなくなる卑怯者だと自虐的に笑うアリババを、アラジンは力強く否定する。
「初めて会った日を覚えているかい?」
アラジンはアリババの目をまっすぐに見て語った。ブーデルに迷宮攻略を目指すことをバカにされたとき、アリババは怒らなかった。けれどほかの人の命の価値がバカにされたとき、アリババは本気で怒り、助けにいくことをためらいもしなかった。
―――それを見た時から、僕は君のことが大好きになったんだ。
「きみは卑怯者なんかじゃないよ。勇気ある人だよ」
自分の尊敬する友達だ、と花が咲いたように笑うアラジンを見て、アリババは自身の瞳に涙が浮かぶのが分かった。
そうだ、冒険はおしまいなんかじゃない。まだなにも、終わってなどいない。力強く立ち上がったアリババが拳を握って語る。この世界には迷宮の中にあった景色のように綺麗なものが、胸を躍らせるものがたくさんある。それを見に行こう、と。
「俺たちでハルの剣を見つけてやろうぜ! きっと大事なもんだからよ!」
「うん―――うん! 見つけよう! ハルさんと三人で旅をしよう!」
「あいつ泣いて喜ぶかもな〜! アリババ、ありがとう。好き! なんて言って」
頬を染めて言うアリババを見て、アラジンは楽しげに笑声を零す。約束だよ、と笑うアラジンに、アリババは大きく頷いた。
「約束だ」
ここから出たらハルと合流してこれからのことを話そうと二人が盛り上がっている頃、ハルは別の転送陣の中に居た。同じ空間には愛馬と、膝を抱えているモルジアナの姿があった。