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チーシャンへ向かうことを目的としているアラジンは、二週間後の定期市にやってくる隊商を待つため、黄牙民族のもとで二週間を過ごすことになった。
ハルは煌帝国の方まで足を運び、剣を探すことも考えた。だがババから近年の煌の猛攻や陣や砦の配置を聞かされ、容易にはたどり着けないだろうと言われたことでその選択肢を消す。ハルの返事を聞いてアラジンは人知れずほっとする。アリババと二人で話していたこと、旅を続けるという約束をハルにはまだ話していないのだ。
「どうして剣を探してるんだ?」
「―――兄の遺品だからです」
「!!」
ハルの言葉に、質問をしたドルジだけでなく話しを聞いていたほとんどが表情を変える。ドルジは顔を下げて謝るが、ハルは首を振った。気にしなくていい、と。
「どこにあるかも分からないのか? 手当たり次第で探していたら、何十年かかるか」
「墓から盗まれてしまったので」
「そんな、なんてこと」
「墓を荒らした男は見つけましたが、剣はとうに売っていたようで。買い手の情報も得られなかったので、こうして宛もなく探し続けているのです」
変わらず無表情ではあったが、誰もがハルの胸中を察して胸を痛めた。たったひとりで、兄の剣を探して旅をしているとは。トーヤは自分と同年代、もしくは下の年の女の子が、あの鋼鉄の鎧兜に身を包んでいる理由がなんとなく分かって苦しくなった。
「……知らなかった、ハルさん、そんな事情があったなんて」
「話す機会もありませんでしたから」
「―――辛かったね」
眉を下げて言うアラジンに、ハルは目を見開いてから、その言葉を頭の中で繰り返していた。
つらい、のだろうか。兄を亡くしたことか。その聖地を荒らされたことか。なんの手がかりも無い今の状況のことか。ひとりで旅を続けていることか。
「私の辛苦など微々たるものです。死してなお、その名誉を傷付けられた兄上の苦痛に比べたら」
「ハル……」
言い終えるやいなや視線を逸してしまったハルの肩を、立ち上がったババが優しく触れる。
「お主は長い旅路に疲れ果てておる。アラジンと共に、この村で休んでいきなさい」
「ですが」
「兄君を想う気持ちは尊重したい。じゃが子供を一人で放り出すことはできん」
「こ、子供?」
子供扱いされたことに戸惑うハルを強引に言いくるめたババは、自身の孫にするようにハルの頭をゆっくりと撫でた。その温度と優しさに亡き兄を思い出しながら、ハルは気づけば強く手を握りしめていた。