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村へとやってきた白瑛と青舜を待ち構えていた黄牙の一族達に、二人は驚愕する。矢で足元を射られ、武器を手にした男達が自分を囲む。その怒りの表情と、昨夜のことを話す彼らに、白瑛は一つ思い当たる節があって剣を構えた腕を下ろした。
勢いよく振り下ろされた剣先が、白瑛の頬と足をまっすぐに斬りつける。微塵も動かずそれを受け止めた白瑛の様子に、攻撃した方が狼狽えて距離を取る。
アラジンが彼らを止めようと手に力を込めると、誰かが背後からアラジンの名を呼んだ。その姿を見てアラジンは目を見開いて、そっと杖を渡す。ハルはただじっとその姿を見つめて、事の成り行きを見守ることにした。
剣を抜かずに交渉の席を求める白瑛に、黄牙の男が叫ぶ。騙されるな、昨日と同じ手だ、と。再び武器を強く握った男達の耳に、聞きなれた声が届いた。昔から何度も聞いたババの怒鳴る声だった。
「見誤るな。己が本当に守るべきものを。そのために、どんな戦い方をするべきかを」
杖を強く地面に打ち付けて言うと、ババは岩場を降りていった。ババが通っていった道には転々と血が滴り落ち、アラジンは言葉を無くして青ざめる。
ゆっくりと、それでいてしっかりとした足取りで白瑛の正面に立ったババは、その膝を折って言った。―――我が一族は貴帝国の傘下に降ります、と。
貴牙の村人はどよめき、不安を顕にする。煌帝国に降ったら家族は皆殺しにされてしまうと言って。昨夜の奴隷狩りが、彼らの不安を煽っていた。
ババは自分達の一族が心身ともに傷ついていることを白瑛に話した。一度は戦うことも考えたが、白瑛は一族を滅ぼすことのない人間だと言ったアラジンの言葉を、自分は信じると。
白瑛はその言葉を聞いて、高台に居るアラジンへと視線を移す。それからババの傷を見て、自身の部下がやったことを確信しながらも、族長の意志を尊重することにした。
「これより黄牙の一族は煌帝国および練白瑛の名の下に安全を保証します!」
白瑛の宣言に、黄牙の一族は混乱を隠せずにいた。これまでの歴史を考えて素直に頷けない男に、ドルジが叫ぶ。まだ分からないのか、と
「誰に降ろうが、誇り高く心を持ち続けていればいいだけだ!」
ドルジの言葉にトーヤが涙を浮かべ、ババは最後の力を振り絞って叫んだ。
「己が意志を示せよ!!」
白瑛を中心に、黄牙の一族が一人、また一人と膝を折り跪く。
その姿を高台から見ていたアラジンは、笛にそっと右手を添えていった。
「すごいねウーゴくん、ハルさん―――。みんな、未来のために何をすべきかを選ぶ勇気を持った人たちだ」
「……そうですね。今この場で、私たちがすべきことは何もありませんでした。彼らはこれからも変わらずに、高潔な一族で有り続けるのでしょう」
ハルはその後お世話になったババの最後を見届けてから愛馬へと乗った。煌と黄牙一族の交渉ではなにも出来なくとも、これから自分に出来ることを探して。