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皆で考えれば今よりいい答えが見つかるはずだと言うアラジンを見上げ、アリババは全身の力を抜いた。第7迷宮で逸るアリババに、アラジンが言った言葉を思い出す。「もう一度、三人で考えよう」と、そういえば、剣探しに躍起になるハルに落ち着けと言ったのは俺だったっけ……。立場が逆転したな。

「怒鳴って、ごめん」
「うん。いいよ」
「……?」

アラジンがアリババに手を差し出すのと同時に、ハルが何かに気付いたように閉じられた窓へと顔を向けた。

その直後、勢いよく壁が破壊され、強風が部屋へと吹き込む。

「!? なんだっ……」

体重の軽いアラジンが部屋の奥へと転がっていく。ハルはすぐさま腰の剣を抜き、現れた影と対峙した。アリババが戸惑いを隠せずにその影の正体を見る。

「よぉ……探したぜ……」

満月を背に現れたのは霧の団。

「助けに来たぜ、相棒!」

部下を従え、魔法道具を手に不敵に笑う、カシムの姿だった。

「カシム!! 何しに来たんだよ!? こんなに部下どもを連れて……」
「何じゃねぇだろ! 俺たちは、お前がさらわれたっていうから助けに来たんだ! しかも相手がとんでもねえ奴だっていうから、部下ども引き連れてきたんだ!」
「なんの話だよ!?」

カシムと呼ばれた青年をアラジンがじっと見上げる。カシムはようやくアリババの周囲に立つアラジン達が、昨夜自分たちを邪魔した人間と気付いた。憎悪を煮え滾らせた黒い瞳がハルへと向けられる。

「あなたがカシムさんですね。アリババさんを連れに来たんですか? アリババさん、ついていく気ですか?」

モルジアナの視線がアリババに突き刺さる。言い淀むアリババの耳に、悲鳴や破壊音が届いた。ホテル内から聞こえるものだ。叫び声を聞いたハルが剣を握る手に力を込める。

「ここまで見境が無くなるとは……」
「どういうつもりだよ! 霧の団がホテルを襲うなんて聞いてねぇぞ!」
「馬鹿野郎! 徹底的にやらなきゃ、こっちがやられちまうんだよ! 『シンドバッド』にな!!」

その名にアリババとハルが息をのむ。話でしか聞いたことがない名に驚いたアリババと、身分を隠して動いていたはずのシンドバッドの素性が盗賊団に漏れているという事実に驚くハル。

―――確かに、内部に情報を漏らしている人間が居る可能性が高いとは聞いていたが。シンドバッド王が霧の団退治に動いていることは一部の人間しか知らないはず……。それこそ王やその周辺の人物だけだろう。……その中に協力者が?

モルジアナの突進で散り散りになった盗賊たちが屋上へと集結する。無関係の人間を巻き込んだ霧の団に怒りを覚えたモルジアナが一心不乱にその後を追いかける。必死でついていくアラジンの後ろからハルも階段を駆け上がった。

屋上に三人が辿り着くのと同時に、地面を突き破ってマスルールが現れる。シンドバッドとジャーファルも続けて屋上に現れると、盗賊たちがカシムの指示で一斉に向かってきた。

「さすがに数が多いな……マスルール!」
「了解」

マスルールが構えの姿勢から強く地面を蹴る。マスルールは一直線に盗賊たちを吹き飛ばすと、カシムの背後に立った。一瞬の出来事に、シンドバッドとジャーファル以外の人間が驚愕で言葉をのむ。ハルが小さく「お見事」と呟くのをアラジンだけが聞いていた。

カシムに歩み寄るシンドバッドに、黒縛霧刀が向けられる。黒い霧によって拘束されたシンドバッドだったが、突如光りに包まれるとものの数秒で黒い霧が溶かされていった。

―――魔力操作……。

ハルがじっとシンドバッドを見つめる。

「この程度の魔法道具は、俺には効かないよ」

シンドバッドの言葉にカシムが悔しさに顔を歪める。これでアブマド王との約束を果たすことができると口にしたシンドバッドは、カシムの背後に居るアリババを見て言った。

「さあ、お前を捕まえて国軍につき出せば……俺の仕事は終わりだ。―――ね、怪傑アリババくん」