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ジュダルの持つ杖の先が光ったと同時にハルが全員の視界から消える。そこには見慣れた赤い閃光のみが残り、気付いた時にはハルがアジトの壁に強く叩きつけられていた。
「ハル!!」「ハルさん!!」
アリババとアラジンがハルに駆け寄るその横を、モルジアナが跳躍して抜かしていく。
音を立てて崩れる瓦礫から、ハルと庇われるようにして蹲っていた団員数名を、三人は必死に救い出した。団員に怪我はないようで、ただ恐怖に腰を抜かしているだけのようだ。
赤い外套を土埃で汚したハルが立ち上がろうとしてふらりつき、その場に片膝をつく。
「ハルさん、大丈夫ですか!?」
モルジアナが青い顔をして、ジュダルの攻撃を無防備に受けた部分の損傷を確認していると、広場の中央からこの場にそぐわない笑声が響いた。アリババが恐る恐る視線を向けると、ハルに攻撃をした張本人が、お腹を抱えて笑っている。
「ほんっとうに! 思い通りに動いてくれるよなぁハルは」
心の底からおかしくて仕方がないと言いたげに、ジュダルは目尻に浮かんだ涙を指で拭った。
「そんなザコほっとけばいいのに、なあ、そう思うだろシンドバッド!」
「ジュダル……!!」
狙われた団員をハルが身を呈して庇うことを想定したジュダルの攻撃に、シンドバッドが表情を険しく変える。同じように、ハルの善性を利用した卑劣な行為に、モルジアナは立ち上がれないハルを守るように抱きしめジュダルを強く睨みつけた。
シンドバッドへ視線を向けていたジュダルが、ルフのざわつきに気付いて振り返る。
そこにはハルを抱えるモルジアナと、庇うように前に出るアリババ。
そしてその三人を守るように、杖を構えたアラジンが立っていた。
「へっ、やる気かよ?」
視線が交差し、アラジンは再びジュダルに黒い太陽を見る。
―――なんなんだろう? この人に会った時から感じるこの感じ。
最初はなんとなくだった……でも、今ははっきりとわかる!!
―――僕は、この人を止めなくてはならない!!
アラジンとジュダルが睨み合い対峙するなか、ハルは攻撃を受けた脇腹の箇所に手をやり思考を巡らせていた。
鉄越しの感触は分からないが、ジュダルの攻撃を受けた場所がぽっかりとへこんでいる。モルジアナの蹴りを二度受けてもカスリ傷一つつかなかった鎧が、ジュダルの……それも魔力をただぶつけただけの攻撃でこんなにも損傷するものだろうか。
―――確かに鎧を手渡された時、シェヘラザード様は「ファナリスの蹴りを受けても支障なく動ける耐久性」と言っていたけれど……まさか物理攻撃にのみ特化した防御魔法付与だったなんて……。いや、一点にのみ特化した防御だからこそ、ファナリスの攻撃にも耐えられていたのか……もしくは相手が「マギ」だったから?
……油断した。なんという不甲斐なさか。攻撃の前に立ちふさがるのではなく、ジュダル本人を狙い動くべきだった。―――けれど、ジンの力を多少借りただけの光速移動では救出が間に合わなかったかもしれない。
(いいや、今はよそう。そんなことを考えても仕方がない。)
大きくえぐれた鋼鉄の鎧が鎖帷子越しにハルの脇腹を圧迫している。骨折とまではいかないが、この状態のまま動き回れは肉体へのダメージが増し、なによりもこれでは満足に戦えない。ハルが鈍痛に耐えながら籠手を外しにかかる。
金属器を持っていないシンドバッドはマギ二人の戦いを止められず、広場中央では二人の戦闘が始まった。
アラジンはこの世界のこと全てに知識が浅く、おそらく魔法すら知らないだろう。対してジュダルは、何年も前に
―――勝負になるはずがない。
魔力の撃ち合いが始まり、無差別に周囲へ広がる攻撃に霧の団の団員が為す術なく逃げ惑う。だが、アラジンへ降り注いだ魔力の塊は消え、応戦するように放たれたアラジンの魔力も、ジュダルへ届くことはなかった。
「マギ」同士の魔力の撃ち合いは、ルフの加護によって打ち消される。
これではいつまでも決着が着かないと、ジュダルは戦い方を魔法へと切り替えた。杖の先に生み出された稲妻が塊となってアラジンへと放たれる。攻撃を防ぐため全面に集められた魔力の壁を突き破り、雷がアラジンへと襲いかかった。ハルがアリババを押しのけて一歩踏み出したのとほぼ同時に、凄まじい轟音と土煙が辺りを包む。
あっけなく戦いが終わってしまったとジュダルが拍子抜けする中、皆がアラジンの惨状を想像して青褪めていると、風によって煙が晴れていく。目に飛び込んできたものに、ジュダルは目を見開いて驚愕した。
青い巨人が、アラジンの背後に出現していた。たくましい腕には雷魔法を受けた影響か稲妻が走っている。
ジュダルは初めて表情から感情を消し、アラジンと背後の巨人を見た。
青い巨人、迷宮のジン。知識のないものならともかく、マギであるジュダルはそれをよく知っている。ジンを実体化させるほどの魔力は、マギである者にしか使えない。
「いいぜ……認めてやるよ。お前のこと!」