変光する一等星


バルバッド王宮。その正門に一人の人物が近付いていく。門番が槍を向け、その人物は顔に巻きつけた布を取り払った。

少年の名はアリババ・サルージャ。
バルバッド王国の第三王子。

騒ぎを聞きつけた国民が王宮前へと集まっていく。門を開けようとしない兵士に国民が石を投げつけた。それを手で制して、アリババは開かれた門の前で剣を掲げる。門を塞ぐように発生した火の柱。呆気に取られる国民の前でアリババは叫ぶ。
迷いはない。

「国民たちよ、しばしここで待て! 今から俺がこの国を変える!!」

アブマドの命令で差し向けられた親衛隊の一人、閻体。男は象へと姿を変えアリババへと襲いかかった。シンドバッドの教えで特訓した「魔装」。練習では一度も成功しなかった、そもそも練習時間が足りていなかったその技を、いちかばちかで発動させる。しかし炎は収束されず、敵の攻撃がアリババへと振り下ろされる。寸前で攻撃を避け炎を収束させようとして、再び攻撃を避ける。身体の傷はみるみる増えていった。

アモンはアリババに応えない。

敵の正面からの突進を受け、アリババが血を吐いて倒れた。大きな足がアリババを踏み潰そうと上にかかる。衝撃で飛びかけた意識の中で、アリババは走馬灯を見ていた。泣きじゃくる自分を励ます母の姿、病床からアリババの背を押した父、勇気を出して霧の団のアジトへやってきた兄。救いを求めるバルバッドの国民。

這いつくばっているアリババに、カシムが吐き捨てる。

「お前にはなんの力もねえ」

(そうだよ)

「覚悟もねえ。王族としても役立たずだ」

(何もねえよ)

血で汚れた拳に温かい光が触れる。それは二人の手。
アリババのよく知っているものだった。

―――恐怖に屈せず、立ち向かえることのできる人間は少ない。
―――君は、勇気ある人さ。僕は知っている!

今まさに踏み潰されそうになっていた大きな足に、アリババが短剣を突き立てる。
寝ぼけている場合じゃない。
力も、何も、今の自分には関係がない。
アリババは再び立ち上がる。血に塗れ、それでも剣を握る手は下ろさない。

―――何がなんでも、俺は、前に進むって決めたじゃねーか!!

再び迫ってくる敵を前にしても、アリババは冷静だった。「魔装」、炎を剣に収束。それが出来ないのなら、腕ごと燃やしてしまえばいい。体の内側も全部。

―――炎になれ!!!

アリババの全身が炎に包まれる。眩い光で敵の視界が潰れ、次の瞬間にはその体は真っ二つになっていた。その身を切り裂いたのは黒い大剣。
アリババがわずか数日で会得した、「武器化魔装」であった。