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象を切り伏せたアリババに、二人目の刺客が放たれる。アモンの剣によって切り伏せられた猿のような生き物は、分裂と再生を繰り返して数を増やし、その度に鋭い爪でアリババの肌を切り裂いていった。火力を上げた斬撃によって焼かれた敵が塵も残さずに消滅する。

そんなアリババの前に、大きな影が降り立つ。

「ボス猿のお出ましか……」

引き連れてやってきた大量の猿を睨みつける。気になるのは魔力の残量。―――その前に一掃する。そう決意したアリババが駆け出し、ボス猿の咆哮が続いた。その顔面に容赦ない膝蹴りが打ち込まれる。凄まじい脚力によって歯を砕かれたボス猿が崩れ落ちた。

ふわりとその場に着地したモルジアナ。それから数秒遅れて自身の隣へとやってきたハルの姿を確認して、アリババは二人の名前を呼んだ。

ハルが自分の正体をアリババに明かしたあと、ハルはアリババと共に王宮へ向かうのではなく、モルジアナを呼ぶためにアジトへと向かっていた。廃灯台へ到着するより先に必死の形相で走るモルジアナと合流したため、ハルは踵を返し、王宮の壁を飛び越えてアリババの助けにやってきたのだ。

モルジアナは、アリババが自分に声をかけずに出て行ったことを気にしていた。ハルにも声をかけなかったと、王宮へ向かう最中に聞いた。

―――頼られないのは悲しいし、悔しい。

モルジアナはぐっと歯を食いしばる。奴隷だった自分を救ってくれたアリババ。その力になりたい。それだけじゃない。国民総奴隷化計画なんてふざけた政策を止めたい。自分にだって、戦う理由はあるのだ。

(それが、今の私の、やるべきこと)

三人を猿が取り囲む。

「あなたには、あなただけの、何かやるべきことを秘めて戦おうとしている」

モルジアナの鋭い視線がボス猿へと突き刺さる。

「でも、それは……こんなところで、こんな連中を相手にすることじゃないでしょう!」

アリババの目的であるアブマドがいるのは遠く離れた玉座の間。
ここで体力を消耗させるわけにはいかない。

「こいつらは私が倒しますから、お二人は先へ!」
「そんな無茶、やらせられるはずないだろ!!」
「無茶じゃないわ。私、やれます」

息を吸ったモルジアナの口から放たれた咆哮が周辺に響く。種族としての力の差。震えて動けない猿に背を向け、(耳を塞いで固まっている)アリババへ笑いかける。

「大丈夫です! こう見えて私、とっても強いですから!!」
「あ、ああ。知ってるけど」

モルジアナはアリババを抱えると、王宮へ向かって投げた。突然襲ってきた浮遊感に叫ぶアリババの体が壁を越え降りる。地面に剣を突き立てて着地すると、すぐ後にハルも壁を越えてやってきた。

「行って、早く!」

壁の向こうから聞こえるモルジアナの声。すぐに動けずにいるアリババの腕を掴んでハルが立たせる。振り切るように駆け出したアリババにハルも続く。

真っ直ぐに、玉座の間を目指して駆ける。
一刻も早く、先へ、前へ。
アブマドの元へ。

その行く手を阻もうと、三人目の親衛隊が道を阻む。人ならざる姿。大きな体を前にしても、二人の足は止まらない。赤い閃光を残してハルが敵の正面へ移動する。二人の剣が衝突し、甲高い音が耳を貫いた。

「先へ!」

珍しいハルの大声がアリババへ投げかけられる。通路を進もうとするアリババを妨害しようにも、男の前にいる人物がそれを許さない。アリババは二人の横を通り抜けて王宮への道へ突き進んでいった。男が呻き声を上げたのは侵入を許してしまったからだけではない。

自分の剣にかかる重圧、その重さに対する驚愕だった。
男の背丈の半分もない、少女とも呼べるその風体。その細腕から繰り出される膂力ではない。
振り下ろされている剣の刀身に見えたのは八芒星。

「貴殿、迷宮攻略者か」
「いかにも」

男が剣を弾き、二人が距離を取る。ハルはアリババが入っていった扉の前に立ち塞がり、剣を構えた。

「生憎、ジンの力は使えない身だ。剣術のみでお相手しよう」
「……望むところだ。いざ!!」



長い階段、通路を駆け抜け、アリババは目的の扉を見つける。戸惑うように槍を掲げた兵士をものともせず、アリババは玉座の扉をこじ開けた。

「アブマドォ!!」

玉座の間へと辿りついた第三王子の姿に、衛兵が言葉を失う。驚愕する副王。不気味な笑みを浮かべる銀行屋。そのどれもがアリババの視界には入っていない。

アリババが見ているのはこの国の王のみ。

「今度こそ、ケリつけに来たぜ!!」