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カシムは語る。スラムに居たころから、自分とアリババは何もかもが違っていた。アリババの母が死んだ時も、アリババだけが真っ当に生きようとしていた。育ちが同じで、自分たちの違いはなんなのか。そう考えていた時に、バルバッドの王がスラムへとやってきた。

アリババが王族の子だと知ったとき、「やっぱりな」とカシムは思った。アリババには王族と、あの優しい母親の血が流れている。
そして、自分にはろくでもないクソ親父の血が流れている。

「不公平じゃねぇか!? 生まれたときからどう生きるかが決まってるなんてよ!!
―――だから俺は決めたんだ、それが“運命”ならば、この手で“運命”に復讐してやると!」

カシムを包む黒いルフが、鋭い爪のようにアリババへと突き刺さった。痛みとともに頭の中へカシムの声が流れ込んでくる。

―――お前だけがいつも光の中で生きていた!
―――いつも、いつも、いつも!

カシムが思い浮かべる自分は、いつも笑っていた。人に囲まれ、穏やかに、なんのしがらみもないように笑っていた。

アリババは気付けば拳を握っていた。
白いルフがざわめき、アリババは力いっぱいにカシムを殴りつける。

「違う!!」

血の滲んだ口元を抑え、カシムはアリババを睨みつけた。

「俺はそんなお綺麗な人間じゃねー! お前が思い浮かべてることをしてた時だって、王族だの血だのと考えたこともねー! ただ毎日必死だっただけだ!!」

スラム出身の自分を見る王宮の人間の眼差し、オアシス都市で金持ちにへつらった自分。惨めな日もあった。汚いことも、自分が情けないと想うようなことを何回も―――

「それを……」

ぶわっと膨れ上がった白いルフの光がアリババの周囲から広がっていく。

「てめーの都合のいいように、勝手に俺を決め付けるんじゃねー!」

その光はカシムへとぶつかった。
アリババの叫び、抑えきれない感情がカシムへと伝わる。



地上ではジュダルとアラジン、ハルが戦闘を始めていた。
今もなお頭に流れ込む凄惨な過去の記憶に、ジュダルは苦痛で顔を歪める。

「これ以上、妙なもん見せんなァ!!」

黒ルフの力を借りて放たれた攻撃を受けたアラジンの防壁にヒビが入る。防壁が砕けたその瞬間に、赤雷と共に飛んできたハルがアラジンを抱えてその場を退いた。ハルの腕の中でアラジンは黒いジンへと視線を向ける。ジンは微動だにせず、アリババの決着はついていないことが分かった。

ルフの語り合い。それは魂のぶつかり合い。

―――勝つんだ! アリババくん!!



ジンの中で、アリババとカシムのルフが衝突する。白い光と黒い光がぶつかり合い均衡を保っていた。

「俺は……お前に負けたくない!!」
そう叫んだカシムに、アリババはふざけるなと返した。
「勝ちだの負けだの、そんなもん必要ねー!! 俺たちの間にそんなもんはねー!」

アリババの言葉に、カシムはある日の夜を思い出す。シンドバッドの前に為すすべもなく捉えられたカシム。アリババに対してシンドバッドは言った。表面上は仲間のふりをしていても、アリババはスラム街の人間とは違う。その発言にアリババは憤って叫んでいた。

―――俺とこいつらに違いなんてねえ!!

あの時のアリババの言葉は、カシムにとってうれしいものだった。
でも、その綺麗事じゃ足りなかった。
だって、

「人間に違いはあるだろ? みんな、別々に生まれるんだから」

能力、容姿、人格。人種、血統。
そして何より「階級の差」

何も持ってない最底辺の人間は上の奴らが眩しくて仕方ない。
そして眩しいそれを、スラムの片隅で、見上げて見上げて、見上げるしかできないまま―――

「俺たちは死んでいくんだ。何も持たねえ、自分の運命を呪いながら」

それが当たり前のことだと、アリババもスラムで見てきたはずだった。
全てを諦めたような表情で言うカシムを、アリババは言葉を失くして見つめる。

「そんな運命を変えられると証明したかった。みんな同じ人間だ。誰でも、俺みてえなクズでも、なれるはずだ……」

カシムを白い光が包む。

「自分とはまったく違う崇高な何かに、なれるはずだ!!」

その光はアリババの姿をしていた。王冠を被るアリババを背後に浮かび上がらせ、カシムは叫ぶ。黒いルフが収束し、鋭い槍がアリババの腹部を刺し穿った。