DIOの娘


・DIO娘
・半吸血鬼(独自設定)

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その子供が生まれたとき、母親は一番に気味の悪さを感じた。子供の父親である男と自身は同じブロンドだというのに、子供は青みがかった黒髪をしていた。自身のグレーの瞳、父親の赤い瞳も引き継がず、深いブルーの瞳を持つ子供。もともと母親としての愛情なんて微塵も抱いていなかった女は、薄汚れた布に包まれた赤ん坊を抱いた腕を徐々に脱力させていく。もともとここに長居するつもりなんて無かった。財力はありそうな男だ。子供はここに置いていこう。その後どうなったところで興味はなかった。

「……?」

大きすぎる寝台に赤ん坊を置く。その時初めて赤ん坊の首筋に、痣があるのを見つけた。どこかにぶつけた覚えはなかった。星型の痣が痛々しく赤ん坊の肌に刻まれている。

―――そういえば父親である男にも、同じ星型の痣があったっけ。

生まれつき痣を持って生まれてくる人間がいることは知っているが、親子でそれが遺伝するだなんて聞いたことがない。ますます不気味だ。

赤ん坊から離れて寝台から降りる。自分の娘はすやすやと眠っていた。女はそこで初めて娘にたいして僅かながら同情心を抱いた。こんな自分の元に生まれてこなければ、まともな生活が出来て、もっと長生きが出来ていただろうに。

恐ろしい父親、不気味な館の住人。そう長くは生きられないだろう。

―――可哀想に。心の中で呟き、大きな扉に手を掛ける。

最後に見たのは血のように赤い瞳と、首をぐるりと一周する傷跡だった。


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月日が経っても、その子供は殺されることがなかった。父親から名前を与えられ、服を与えられ、食べるものを与えられ、生かされていた。黒髪と海のように深いブルーの瞳。ブロンドに赤眼を持つ父親から受け継がれた特徴は、肩の痣だけ。

―――いや、その痣が刻まれている肉体は元々男のものではなかったのだから、父親から受け継いだものは一つも無いのかもしれない。

ジョナサン・ジョースター

百年前に死んだ男に娘はよく似ていた。もし彼に娘が居たら、こんな風だっただろうと想像が出来るほど。

これは父親が娘を殺さなかった理由の一つだった。


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「テレンス、風邪でもひいているの」

幼い子供の舌足らずな声が部屋に響く。娘の前にはテレンスが手作りした料理が並んでおり、手にはフォークが握られていた。質問を投げかけられた男が冷や汗を流し、自分の主人に視線を送る。長いテーブルの先、娘と対面するように椅子に腰掛けた父親は、赤眼を妖しく光らせて娘の食事風景を見ている。

「答えてやれ、テレンス」
「……いいえ、名前様。私は至って健康です」
「そう」

父親とテレンスの会話を聞き娘が答える。娘は皿の上の料理に目を落とし、それから食事を再開させた。いつもよりも味が濃い。料理上手なテレンスにしては異常な程、何かを誤魔化すような味付けだった。

「美味いか」
「うん」

心底愉快そうに父親が笑う。ワイングラスを揺らす父親に視線もやらずに、娘はひたすら目の前の料理を胃の中へと流し込む。テレンスは普段より青白い顔をしていた。無表情のまま食事を続ける自分と、それを楽しそうに見つめる父親をどんな気持ちで見ているのだろう。自分を捨てた母親のように「不気味」だとでも思っているのだろうか。


娘は鉄臭い料理を口にしながら思う。


拒む選択肢なんて用意されていないのに。
神様って残酷だ。


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1988年 エジプト カイロ

―――100年生き続けた悪の帝王は滅びた。


多くのものを失いながらも、承太郎は一人そこに立っていた。すでに死んでいる一族の宿敵の亡骸を見下ろしながら、散っていった仲間の姿を思い浮かべる。

「―――ッ!」

一瞬で、戦いの中で限界まで研ぎ澄まされた感覚が蘇る。肌を刺すような気配を感じ、承太郎は眼前の死体に睨みつけた。

DIOは間違いなく死んでいた。

―――この男ではない。だが確かに、DIOに似た気配を感じた。

靴底がアスファルトを擦る僅かな音に、承太郎は勢いよく振り返る。そこに居たのは幼い子供の姿だった。金色の髪の隙間から覗く赤眼が、承太郎をじっと見ていた。大きく見開かれた瞳は承太郎から奥の亡骸へと移る。一切の感情の起伏を見せず、子供はゆっくりと歩き出した。しっかりした足取りで承太郎に近付いていく。

「……お前」

子供からは殺気を感じなかった。敵意すらない。感情が抜け落ちたような表情から何かを察することもできないまま、子供は承太郎の横を通り過ぎ生命活動を終えた亡骸の傍に膝をつく。

DIOの亡骸に何か手を施そうとすれば、承太郎はすぐさまスタープラチナを出現させる準備をしていた。だが子供は何をするでもなく、ただ地面に力なく横たわる男を見ている。

それからすぐにSPW財団が駆けつけ、亡骸の傍に座り込む子供を遠ざけようと動いた。肩を押されてもびくともしない子供の前で、別の財団の人間がDIOの亡骸を運ぼうと腕を伸ばすと小さな手がそれを阻む。

「……何を、……ぐっ!?」

みし、と骨が軋む音が聞こえ男は呻き声を上げる。腕を掴んでいるのは少女の細く白い手だというのに、見た目に似つかわしくない怪力が男の腕を今にもへし折ろうとしていた。血のように赤い瞳が妖しく光る。その不気味さに男が悲鳴を飲み込むのとほぼ同じタイミングで、承太郎の腕が少女の手首を掴んだ。

「このまま放置していても、塵になって消えるだけだぜ」

承太郎のグリーンの瞳をじっと見つめ、少女は手を離す。財団によって運ばれていくDIOをぼうっと眺めている少女の横で、承太郎は鋭い眼光を保ったまま少女を見下ろしていた。車の中に運ばれDIOの姿が見えなくなると、少女は分かりやすく脱力して深く息を吐いた。そのまま承太郎に背を向けて足を踏み出すのを、承太郎が引き止める。このまま行かせるはずがなかった。

DIOと同じ金髪と赤眼。なにより肩に見える星型の痣。頭に浮かんだ一つの仮説に、承太郎は帽子のつばを下ろすと、口癖を口にする。厄介な問題を残してくれたものだと吐き捨てたくなるのを堪え、少女の腕を掴んでそのまま車に乗り込んだ。

数時間後、奇跡の生還を果たしたジョセフと共に、承太郎がDIOの亡骸が朝日に晒され塵になるのを見届けている、まさに同時刻。財団の監視のもと車内で膝を抱えていた少女の髪色がみるみる色を変えた。煌めく金色から青みがかった黒髪へ。空虚を見つめていた赤い瞳は海のように深いブルーへ。財団の人間が戸惑いを隠せずに狼狽している横で、少女はそっと目を伏せる。
父親がこの世から消え去ったことを、その身で知って。

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その後は
・色々あってポルナレフと一緒にフランスへ
・承太郎とは互いに確執を抱えたまま成長
・父親に対する複雑な感情も消化できないまま思春期に突入
・ポルナレフが矢の調査で居なくなってから父親の部下を再結集して好き放題してたら承太郎に捕まり、勝手なことができないように助手として連れ回される
・承太郎との溝がマリアナ海溝レベルの深さになった頃に4部突入