花火(さしす)
「花火?」
少女がこてんと首を傾げた拍子に、白い髪が頬へとかかる。
夏油はそれを指で払い除けてやってから、「そうだよ」と頷いた。
それを無表情で見上げていた少女は、腕に抱き抱えていた呪骸を部屋の隅に置く。
それからそっと小さな手を夏油の左手へと伸ばした。
少し熱いくらいの体温と生ぬるい風。
二人は静かに廊下を歩いていき、夜に訪れることのないグラウンドへと辿りついた。
そこにはヤンキー座りをする家入と五条の姿がある。
「お、きたきた」
家入がそう言いながら花火の入った袋を開ける。
糊がべりっと剥がれる音が大きく広がった。
淡い月明かりだけが四人の姿を照らし、ぼんやりとした影を土にうつし出している。
夏油は二人と同じようにしゃがみこみ、家入の手元をじっと見下ろしていたが、視線を感じて眼球を動かした。
闇夜でも目立つ白髪、いつもと変わらないサングラスの下から、五条が真っ直ぐにこちらを見ている。
正確には、夏油の隣で同じように膝を抱えて縮こまる少女を見ていた。
思わずこぼれそうになるため息を飲み込む。
特異な瞳を持つ者同士、分かり合える部分もあるだろう。
だというのに、五条は必要以上に少女と関わりを持つことを避けていた。
少女が五条の視線にやっと反応を示し、目だけでなく顔ごと五条の方へと向ける。
ふたりの視線が交わることはなく、大きい方の頭があからさまに伏せられた。
サングラスの下から覗く宝石のような六眼に、夏油は今度こそ大きなため息を吐いてから、家入の手から花火を受け取る。
少しでも打ち解けられるようにと提案したこのイベントが、僅かでも少女の思い出になるように、と願いを込めながら。