これがいつからかなんてわからない。
アタシはあの人を追いかけて、頑張る男の子の眩しさに目を細めて、ただそうしているだけなんだと思っていた。にもかかわらず、アタシの中にはいつも一人の女の子が存在していた。
この感情が恋と呼ぶものなら、なんて不自然で、自然なのだろう。
初めは間違いなく女の友情だった。でも、あの子の悩む姿を隣で見て、涙を流していたら慰めて。そうしているうちに、気がついたら後戻りができないところまで来てしまっていた。
でも、あの子の気持ちを知っているから、彼の気持ちを知っているから、ひたすら相談を受けるだけのポジションに甘んじていたのに。
あの子の好意に甘えて冷たく当たる彼よりも、アタシの方が適任じゃない?
あの子はお姫様なのだ。騎士に守られ、王子様を夢見るお姫様。別に、騎士も王子様も配役が完全に決まっているわけじゃないじゃない。
それならアタシがそれに名乗り出たってなんの問題もないでしょ?
だって彼は、自分がそうだと信じて疑わずになんの努力もしていないじゃない。
悩ませて、涙を流させるだけなら王子様と呼ぶに値しない。王子様って、もっと優しくてキラキラしてて、いつだってお姫様のピンチに颯爽と現れるものでしょ?
彼女の王子様になれるのはただ一人。ねえ泉ちゃん。本当にわからないなんて言わせないわよ。悔しいけれど、ずっとそばにいたのはあなただもの。
でも、"お兄ちゃん"に逃げようとするなら、そこを奪われたって文句は言わないでちょうだい。
アタシは確かに彼女の"お姉ちゃん"だけど、やろうと思えば何にだってなれるの。
だからねえ。本当に何も変わる気がないのなら、お間抜けな王子様ヅラをした騎士様から、お姫様を攫ってしまうわよ?
――覚悟しててちょうだい。
夢見るオヒメサマも、甘えてばかりのオウジサマも。アタシが全部塗り替えてあげる。
だからね、亜希ちゃん。その時が来ても、あまり驚かないでちょうだいね。
←■
→