誰にもあげない

誰にもあげない



「おはよう」

教室に入るなりおれに話しかけてきた彼女に、おれはゲーム機に向けている顔をあげずに小さく頷いた。

「……うん……」

「今日はなんのゲーム?」

そう言って隣の席の彼女、ミオは椅子をおれの脇まで持ってきてゲームを覗きこんだ。
瞬間ふわっと香るシャンプーのにおい。
なんとなく、おれが好きなアップルパイににている気がした。

「別に……」

彼女の方をみないで答えれば、ミオはそれ以上はなにも言わず、隣でおれの様子を見ているだけだった。



ミオは同じクラスだけどこれといって共通点もなくて、だからなんで毎朝こうして穏やかな時間が流れるかすらわからない。
いつからか話すようになって、ミオのたっての頼みでお互いに名前呼びはしている。

ただ、おれの勘違いじゃなければ、ミオはおれを好いてはいてくれている。



ときは放課後。
なんとなくいつもと様子が違うミオに目をやれば、ミオと視線がかち合った。

はじめてみたその、なんとも憂いを帯びた顔に、おれの心臓がどくどくと脈を早めた。

遠巻きに彼女の笑顔をみることはあったし、だから彼女のこの表情におれは動揺した。

「ミオ、なにか……あったの?」

気づけばおれは教室を去ろうとした彼女の手をつかんでいた。
自分でもこんな風な大胆な行動に動揺した。

「あー……うん。今から屋上でさ。……ラブレターの返事、しにいく、っ!」

ミオの言葉途中におれはミオを抱き締めていた。
だってねえ、おれの自惚れじゃなかったら。

「行かないで。ミオ、は。おれが好きなんじゃないの?」

小さく呟くようなそれに、ミオは目をまんまるにしていたけど、次にはおれを抱き締め返していつもの優しい声でいった。

「うん。好きだよ。……研磨くんは?」

あんまりにも優しく笑うミオに、おれは目が離せなくて、おれの口から思わず本音が漏れた。

「すき……だから、誰にもあげない」

子供っぽいその言葉にも、ミオはやっぱり優しく笑うだけだった。



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蒼井さまリクエストです。
研磨くんのお話しです。
期待に添えたかわかりませんが精一杯書かせていただきました。
リクエストありがとうございました!


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