言霊
お前は俺を好きになる。
彼がそう、私に宣言したのは、半年前のことだった。
言霊
「お、ミオじゃん?」
不意に出くわした、ひとつ上の嫌みなこいつは、私の腐れ縁の先輩、黒尾鉄朗だ。
小学校からずっと学校が一緒で、昔なんかは一緒にバカやって笑いあったりもした。
ただ、高校に入ってからは、男女が仲良くすると、周りから"お似合いカップル"だのと揶揄されるため、私も彼も互いに距離を取るようになっていた。
そんな彼は半年前から、なぜか私に突っかかるようになった。
「なあミオ? 俺のこと、好きになったか?」
なんて、嫌みな顔で言ってくるのはいつものこと。
彼の真意なんて私にはわからないしわかりたくもない。
「黒尾先輩も暇だね。私はあなたみたいなのは絶対好きにならないから!」
べー、と舌を出して彼に悪態をつき、私は彼から逃げるように彼の脇を通りすぎる。
なんだってそんな風にからかったりちょっかいを出してくるのか、わからない。
プリプリしていく宛もなく歩いていたのに、なぜだか私の行く先にいた黒尾先輩に、私はひとつため息を吐く。
「……はあ。なに黒尾先輩?」
私の行く手を阻むように両手を広げられてしまったため、私は仕方なく彼の用件を聞くことにした。
だけどそれが、私の勘違い。
「え、!」
私は次の瞬間黒尾先輩に抱き締められた。
両手を広げたのは、行く手を阻むためじゃない。
はじめからこうするためだったのかと、私は悔しさから彼をにらむ。
「なあ、ミオ?」
「……」
「お前は俺を好きにならないって言ったよな? でも俺は、お前が好きだぜ?」
言った彼の優しい笑顔に、私の胸がざわめくのがわかった。
どっど、と高なる心臓に、私は固まり言葉を失う。
カアッと頭に血流が集まるのがわかる。
いま気づいた。私はこいつが、好きだ。
いつからか、こんなにも黒尾鉄朗が、好きだ。
「く、ろおせんぱ……」
「あー、ミオはわっかりやすいな?」
彼はくつくつと笑うと、私の耳元に顔を寄せ、低く意地悪い声で言った。
「言霊の力って、信じるか?」
ああそうだなって、私はそのまま彼の胸に顔を埋めた。
例えば彼が、私に言い続けた言葉を、私が聞き続けてしまったこと自体、彼の策略通りだったのかもしれない。
私は結局、彼の言うとおり、彼を好きになってしまっていたのだから。
ただそれが、彼の言霊のせいか、もとから私が彼を好きだったのかなんて、今となってはわからないのだけれど。
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90万ヒット企画より。
「黒尾の先輩設定最高」
「是非読みたい」
ありがとうございました!
151021