誘う

(「さんにん」続き)


誘う




「はぁ……」

「どうした、ミオ?」

時は昼休み。
あからさまにため息をついたミオに、クロは心配そうに声をかけた。
おれはといえば、そんな二人の隣でゲームに目を落としていた。

「クロ……何でもないですよ」

「……ふーん」

それ以上は、二人とも会話はしなかった。
ミオが何を悩んでいたのかなんて、おれの知るところではなかった。



部活の休憩中、不意にクロに話しかけられた。

「研磨。お前よ、ミオと居るときくらいゲームはやめろよ?」

「……だって、なに話していいかわかんない……」

むす、と返事をすれば、クロは少し間をためて口を開く。

「あー。お前が遊園地に誘ったりなんか無理だよな〜。俺今度、ミオと遊園地に行くわ。ミオ、遊園地行きたいっつってたしな〜!」

にしし、と笑うクロにおれは思わずクロをにらみあげた。
ミオが遊園地に行きたいだなんて、なんでクロが知ってるの。

……クロもクロだけど、ミオもミオだ。

「……ミオが遊園地行きたいなら、おれがつれてくし……」

「ん? お前にできるの?」

クロはおれを見て楽しそうに笑う。
いらっとした。

「出来るし。行くし……」

そう、吐き捨てるように言って、おれは練習に戻っていった。



その日の帰り道。
おれとミオは無言で帰路を歩く。
言わなきゃ、言わなきゃと思っているのに、なかなか言葉が出てこない。

「研磨くん?」

しびれを切らしたミオは、おれを覗き込む。

「っ! 遊園地」

「え?」

「遊園地、行こう、か……」

振り絞った声は掠れていた。
だけどミオは、そんなこと気にする様子もなくおれを不思議そうに見ている。
どき、と胸が高鳴った。

「ありがとう。嬉しい、な……」

ふわ、とした笑みにおれは柄にもなく幸せを噛み締めた。

「うん、別に……」

そっけない返事にもミオはただ嬉しそうに笑うだけだった。


遊園地でのデート当日、おれは気が気じゃなかった。
かわいらしい私服姿に、他の男の視線が気になる。
それに、どうしていいか分からなかった。

「研磨くん、あれ乗ろう?」

「うん」

「わー、あれ食べよう」

「うん、」

遊園地なんか、楽しめなかった。
君が気になって仕方がないんだ。

「研磨くん……やっぱり楽しくなかった?」

「……ミオが、可愛いから。集中できないだけ、だよ」

思わず漏れた本音に、ミオは固まってしまって、でもおれはミオの手を握り歩きだす。

「研磨くん、手……」

驚くミオを他所に、おれはミオを振り返る。

「次。どこいくの?」

誤魔化すように言ったら、ミオが俺の手を握り返してきた。

「研磨くんが行きたいとこなら、どこでもいいよ」

ああ、おれはやっぱり君が好きだって、改めて思い知らされた。


――――――――
千明さまリクエストです。
研磨くんで、「さんにん」続き、黒尾くんに挑発されて遊園地デートに誘うお話です。
期待に添えたかわかりませんが、精一杯書かせていただきました。
リクエストありがとうございました!


160319