ヘタレ


へたれ


「いやー、まあ、はは……」

猫背な彼は、そう誤魔化すように笑っていた。

東峰旭は見た目社会人と間違われるのに性格は柔和……いや、柔和を通り越してへたれかもしれない。

自信がなくって弱弱しくて、いつも人の陰に隠れてしまうタイプ。

それでも私は知っている。彼は確かにかっこいいのだ。

烏野高校バレー部のエースである彼のプレーはそんな彼の性格とは正反対に強く荒々しいもので、私はそんなギャップに惹かれてしまったのかもしれない。

「ねー、旭くん、ねえ、今度デートしようよ?」

「え、ミオ? あー、その……」

こうやって私がぐいぐいと迫っても、彼はいやな顔ひとつしない。

「うん、じゃあ部活が終わったら、しようか」

へら、と笑うその顔は、やっぱり顔に似合わない柔和なものだった。

教室ではいつも男子と話しているけど、彼はいつだって聞き役だったし、いつでも優しく笑っていた。



デートだって、いつだって私が主導権を握っている。

「ここと、あそこ。それからあそこも行きたい」

「ひえー、それは行きすぎじゃない?」

旭くんは隣で眉を下げている。

「いーの。ね、旭くんはどこか行きたい所ないの?」

「いやー、俺はいいよ。ミオに任せる」

いつだって彼は自己主張なんてしない。
私はそれが少しだけ不満だった。

だけどそれは仕方のないこと。なぜなら――

「はー、疲れた。旭くん、また今度デートしてね?」

私は彼に笑って見せた。
何を隠そう、私と彼は付き合ってはいない。
私はへたれな彼につけこんでこうやって無理やりにデートに誘っていただけなのだ。

「あー。でも。ねえ、ミオ」

彼を振り返れば私は彼に抱き寄せられ、その胸に抱きとめられていた。

え? なに?

「でもさ、ミオ。これからは……ちゃんと俺と付き合ってくれませんか?」

見上げた彼のへたれではない優しい笑顔に、私の心臓が壊れそうなくらいに早鐘を打った。





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90万ヒット企画世より。
「ヘタレ旭さんと積極的なヒロインのお話」
へたれ、でもかっこいい。それが旭くん!


151022